地方からテクノロジーで未来を変える──大学生起業家が挑むロボット事業の可能性
FUSHITANI株式会社 代表取締役 伏谷健太郎氏
地方企業にテクノロジーを届けることを目指し、ロボット導入支援に取り組むFUSHITANI株式会社。岡山を拠点に、ロボットの導入支援やカスタマイズ開発に取り組んでいます。代表取締役を務めるのは、大学生起業家の伏谷健太郎氏です。同社は製造業の現場支援にとどまらず、ロボットの遠隔操作を活用した障害のある方の就労支援など、社会的価値の創出にも挑戦しています。本記事では、事業の取り組みや起業の背景、そして「地方から日本を良くしていきたい」という想いについて伏谷氏に伺いました。
ロボット導入支援で中小企業の現場を支える
――現在の事業内容について教えてください。
私たちはロボットを中心とした導入支援の事業に取り組んでいます。現在扱っているのは主に二つで、一つは四足歩行のロボット、もう一つは車輪型の移動ロボットです。ホームページにも掲載している通りですが、四足歩行のロボットについてはメーカーが持っている機体をベースに二次開発を行っています。現在は遠隔操作の取り組みも進めています。
車輪型のロボットについては、工場での利用を想定した搬送用途が中心です。メーカーから提供されたロボットを保有し、必要に応じてカスタマイズを行っています。中小企業の製造業の現場では、人手不足の課題があり、監視や設備点検、搬送などの業務をロボットで補うことができないかという相談が増えています。
四足歩行のロボットは用途の自由度が高く、物を運ぶだけではなく、工場の巡回や設備点検などにも活用できます。さらに遠隔操作を組み合わせることで、障害のある方の就労支援などにも活用できるのではないかと考えています。例えば、A型やB型の就労支援の方がロボットを操作して仕事をするような、新しい働き方を生み出す可能性があります。
また、外に出ることが難しい方がロボット操作を通じて社会参加するという形も考えられます。単なる業務効率化だけではなく、社会的な価値にもつながる取り組みとして、この分野には大きな可能性があると感じています。
世界を見て芽生えた「地方を良くしたい」という想い
――起業のきっかけや背景を教えてください。
私がこの道に進んだきっかけは、21歳のときに経験した海外での出来事です。当時、三〜四か月ほどバックパッカーとして世界を回りました。11カ国ほどを急ピッチで訪れたのですが、その経験を通じて日本の良さを改めて感じる一方で、「このままでいいのだろうか」という疑問も芽生えました。
私は島根県益田市の出身で、大学進学で岡山に来ました。それまで約20年間、地方で生活してきた人間です。地方にはまだまだ可能性があると感じている一方で、人や企業が減っている現状も目の当たりにしてきました。
その経験から、学生の自分でも地方企業を良くするために何かできないかと考えるようになりました。ロボットを選んだのは、大学でロボットを専攻していたことがきっかけです。まずは自分たちの強みを活かして取り組んでみようと思いました。
技術力だけで言えば大手企業にはかないません。ただ、大手企業のロボットは価格が高く、中小企業がすぐに導入するのは難しい場合があります。私たちは学生エンジニアのチームであるからこそ、比較的柔軟な形で導入支援ができると考えています。
中小企業の方が新しい技術を試しやすい環境をつくることができれば、企業側にとってもメリットがありますし、私たちにとっても成長の機会になります。そうした形でお互いにメリットのある関係を築けることが、今の私たちの特徴だと思っています。
小さなチームだからこそできる挑戦
――現在の組織体制について教えてください。
現時点では、正式な社員は私一人です。もう一人、ロボットエンジニアのメンバーが業務委託という形で関わってくれています。そのメンバーは高専出身で大学に進学してきたエンジニアで、技術面では彼が中心になって開発を進めてくれています。私自身も開発に関わりながら、事業づくりや営業、会社全体の方向性を考える役割を担っています。
まだ小さな体制ではありますが、その分意思決定のスピードは早いですね。やろうと思ったことをすぐに試せるのは、今の規模だからこその強みだと思っています。新しい技術やアイデアを試すときも、柔軟に動けるので、スタートアップとしては大きなメリットだと感じています。
一方で、もちろん課題も多くあります。特に営業面はこれから強化していかなければいけない部分です。技術やアイデアがあっても、それを必要としている企業にしっかり届けなければ意味がありません。どうすれば企業の方々に価値を理解してもらえるのか、その伝え方はまだまだ学んでいかなければいけないと感じています。
また、私自身が経営者として成長していくことも大きなテーマです。学生という立場ではありますが、会社を運営する以上は一人の経営者として責任を持つ必要があります。経営の判断や事業の方向性についても、常に学びながら前に進んでいるというのが正直なところです。
さらに、企業によっては変化に慎重な文化があることも感じています。新しいテクノロジーを導入することに不安を感じる企業も少なくありません。だからこそ、単に技術を説明するだけではなく、「それを使うことでどんな未来が実現できるのか」を具体的に伝えていくことが大切だと思っています。相手がワクワクできるような未来像を共有しながら、一緒に変化をつくっていけたらと考えています。
地方から世界へ挑戦する企業を目指して
――今後の展望や目標を教えてください。
まずは岡山で事業の基盤をしっかりつくりながら、将来的には自分の地元である島根にも拠点を移したいと考えています。島根は人口も少なく、企業の数も年々減っていると言われています。ただ、だからといって地域の可能性がなくなったわけではないと思っています。むしろ、地方だからこそできる挑戦や、新しい価値の生み出し方があるのではないかと感じています。
私自身、地方で育ってきた人間なので、地元には強い思い入れがあります。だからこそ、将来的には地元に誇れる会社をつくりたい。そして、その会社があることで地域の人たちが少しでも前向きになれたり、若い人たちが「地元でも面白いことができる」と思えるような存在になれたら嬉しいですね。会社の成長と地域の活性化が重なっていくような形をつくれたら理想だと考えています。
もう一つは、国内だけで終わる事業にはしたくないという思いがあります。最初は日本の企業を支えるところからですが、いずれは海外展開にも挑戦していきたいですね。自社の事業として海外に出ていくこともそうですし、取引している企業が海外に進出する際に、そのサポートができるような存在になれたら面白いと思っています。
時間はかかるかもしれませんが、テクノロジーの力を活かして地方企業の可能性を広げていきたい。地方からでも新しい挑戦ができるということを、自分たちの取り組みを通して示していけたらと思っています。その積み重ねが、日本全体を少しでも元気にすることにつながれば嬉しいですね。そしてその方向性はロボット以外の可能性もあります。学び・挑戦を続け、新しいことにも取り組み、柔軟に変化しながら進んでいこうと思います。
本と美術館と旅がくれる、新しい視点
――最後に、リフレッシュ方法や趣味について教えてください。
普段は読書をすることが多いですね。経営やテクノロジーに関する本を読むこともありますし、まったく違う分野の本を手に取ることもあります。本を読んでいると、自分とは違う考え方や価値観に触れることができるので、自然と視野が広がる感覚があります。忙しいときほど、少し立ち止まって本を読む時間をつくるようにしています。旅は引き続き楽しみたい。新しい地域にはたくさんの学びがありますね!世界も日本もまだまだ開拓していきたいです。※現在:世界11カ国 日本26都道府県
最近は美術館にも行くようになりました。まだ月に一度くらいの頻度ではありますが、作品と向き合う時間が好きなんです。何かを考えようとして見るというより、まずは何も考えずに眺めてみる。そうしていると、自分の中でまとまっていなかった考えが整理されていくことがあります。仕事とは直接関係ないように見える時間ですが、むしろそういう時間のほうが新しい発想につながることも多いと感じています。
あとはシンプルですが、おいしいご飯を食べることも大切なリフレッシュですね。忙しい日が続くとつい食事がおろそかになりがちですが、ちゃんとおいしいものを食べると気持ちも切り替わります。そういう時間があるからこそ、また仕事に向き合えるのかなと思います。
私は地方から日本を良くしていきたいという想いを持って事業に取り組んでいます。同じように未来を前向きに考えている方や、新しいことに挑戦していきたいと思っている方と一緒に、これからも面白い取り組みを続けていけたら嬉しいですね。