家族の時間をやさしく支える――須崎旅館がつくる“また帰ってきたくなる宿”に
有限会社小鹿野温泉須崎旅館 代表取締役 須崎真紀子氏
有限会社小鹿野温泉須崎旅館は、赤ちゃん連れや子育て世代の家族が安心して過ごせる宿づくりに力を入れている旅館です。貸切露天風呂やベビー用品の無償提供、朝夕のお部屋食など、小さな子どもがいてもゆっくり過ごせる工夫を積み重ねてきました。明治40年から続く旅館を受け継ぎ、現在は須崎真紀子氏が家族とともに運営しています。本記事では、事業の特徴や旅館を継いだ背景、組織づくり、そして今後の展望について伺いました。
赤ちゃんと寛げる宿へ
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
主に子育て世代のご家族を対象に、赤ちゃん連れでも安心して泊まれる宿としてサービスを提供しています。小さなお子さんがいると、旅行先で気を遣うことが多いと思いますが、そうしたご家族にもゆっくり過ごしていただけるようにしているのが特徴です。
実際に、赤ちゃんは2か月くらいから来ていただくことがあります。当館のサービスとして、貸切露天風呂は無料で1時間ご利用いただけますし、他にも、ベビーソープやベビーバス、ベビーバスマット、ベビーベッドなどが設置されており、これらは無償でご利用いただけます。また、おむつなどを捨てられるゴミ箱も設置しています。
お食事は朝夕ともにお部屋食です。赤ちゃんがいると食事のたびに移動するだけでも大変ですが、お部屋でお召し上がりいただけることで、親御さんも落ち着いて食事を楽しんでいただけるようにしています。もともとコロナ前からお部屋食を続けていたので、その体制がそのまま今の強みにもつながっています。
お部屋は全部で14部屋あり、そのうち食事を提供するお部屋が7部屋あります。
中学三年生で決めた継承
――経営者になられた経緯を教えてください。
この旅館は明治40年から続いており、もともとは織物で栄えた町の中にある宿でした。父と母が3代目として旅館を続けてきており、私は6人兄弟の5番目です。旅館は当初、長男が継ぐ流れでした。しかし、兄は婿へ行くことになり、姉たちはそれぞれ嫁いでいき、結果的に私が継ぐことになりました。中学3年生の頃には、「自分がやろうかな」という気持ちになっていました。父と母からは「継ぐ人がいない」という話もありましたし、お願いされたというよりも、何より私は父と母が大好きだったので、自分がやろうという思いが強くなっていったのだと思います。
――組織体制について教えてください。
今は社員が3人で、主人と姉と私が中心となって運営しています。そのほかにパート・アルバイトの方がいて、全体では25名ほどです。朝昼晩で勤務時間が分かれていて、短時間で5時間くらい働く方が多いです。
癒やしの循環を広げる
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
子育て世代の利用が多いのですが、1人旅の方も部屋数限定で受け入れていて、とても稼働率が良いです。一人で来てくださった方が、その後ご家族で来てくださったり、カップルで来ていた方が結婚してお子さんが生まれ、さらにご両親を連れて「三世代旅行」のような形で来てくださったりすることもあります。そうしたつながりを大事にしながら、また来たいと思っていただける宿であるために、今後もリピーターの方を大切にしていきたいと思っています。
今後売り上げを伸ばしていく上でも、現在の建物にはキャパシティの限界もあります。その中で一つ考えているのが、ペットと一緒に泊まれるお部屋です。お子様連れもそうですが、ペットと泊まれる場所はあまりありませんので、空き家を活用し、今の旅館とは少し離れた場所でペット同伴のお部屋を作れればと思っています。
現在は個人のお客様が多いですが、法人のお客様にも例えば、社員さんの研修旅行などでご利用いただければと思います。20名から30名ほどは受け入れられますし、早めに抑えることもできますので、そういったお話もあれば、閑散期であればなおありがたいですね。
――現在、課題として捉えていることを教えてください。
季節的な変動もありますが、1月、2月は地域的にも寒い時期ということもあって閑散期となり、秩父全体で観光客の方は少なくなります。宴会場もありますので、日帰りでのお食事の提供なども行っております。
――今の事業を通して、社会をこうしていきたい、というお考えはお持ちですか?
旅館業は人手不足が大きな問題となっています。私たちは朝から晩まで働いているそんな仕事スタイルなのですが、お客様の疲れを癒やし、「また明日も頑張ろう」と思っていただけるように仕事をしています。働いているだけでも社会貢献というか、人のためになっていると思える仕事です。お客様にリフレッシュしていただき、また来ていただいてリフレッシュしてもらって、そんなサイクルで癒やしの場所を提供したいと思っています。
誰かのために働くということ
――最後に、経営者、これから起業したいとお考えの方へメッセージをお願いします。
お金をいただくだけではなく、困っていることを解決していくのが仕事だと思っています。いろいろなことを解決していくのは大変ですが、工夫しながら働いていくことが大事だと思います。すぐに辞めたり転職したりするのではなく、少し大変でも頑張ってみようと思ってもらえたらうれしいです。旅館業に限らず、どんな仕事でも楽しく頑張っていただけたらと思います。
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
お休みの日は温泉施設が好きなので、温泉施設に日帰りで行ってマッサージ受けたりとかしています。周辺に結構あるのでよく行きます。
また、秩父や埼玉県内の自然に触れられる場所に行くこと、家族で食事をすることなどがリフレッシュ方法ですね。