コーポレートベンチャリングの最適化を目指して――戦略設計から実行まで伴走し、新規事業創出の可能性を広げる
株式会社XSprout 代表取締役 香川 脩氏(共同代表)
株式会社XSproutは、大企業によるスタートアップ投資や新規事業創出を支援する、コーポレートベンチャリング領域の総合アドバイザリー企業です。株式会社eiiconとSpiral Innovation Partners株式会社のジョイントベンチャーとして設立され、香川氏と松本泰拓氏の共同代表体制のもと、企業とスタートアップの連携を戦略設計から実行まで一気通貫で伴走支援しています。
理念に掲げるのは「コーポレートベンチャリングの最適化」。CVC市場の成熟を支える知見づくりにも取り組んでいます。本記事では、代表取締役の香川氏に、事業の特徴や会社設立の背景、経営の考え方、そして今後の展望について伺いました。
コーポレートベンチャリングの最適化を目指すCVC支援
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当社は企業のコーポレートベンチャリング推進において、構想段階から実行フェーズまでを横断して支援しています。
株式会社XSproutは、株式会社eiiconとSpiral Innovation Partners株式会社のジョイントベンチャーとして設立しました。eiiconはオープンイノベーションを文化にすることを掲げ、企業の新規事業創出を支援してきました。一方でSpiral Innovation Partnersはベンチャーキャピタルとしてスタートアップ投資を行い、資本面から企業の成長を支援してきました。
両社がそれぞれの事業を進める中で、共通する課題が見えてきました。eiiconでは、企業が協業を進める中で「資本連携も検討したいがどう考えるべきか」といったファイナンス面の相談も多くいただきます。ただ、オープンイノベーション支援を主とする立場では投資に関する専門的な知見が十分にカバーしきれない場面もありました。
一方、Spiral Innovation Partnersでは、投資そのものだけでなく、投資先と事業会社との協業をどのように創出していくかという課題に直面していました。
こうした背景から、双方の強みと課題は補完関係にあると捉え、両者の知見を掛け合わせることでより本質的な支援ができるのではないかと考え、XSproutを設立しました。これまで顧客のオープンイノベーション支援をしてきた我々ですが、XSproutの存在は我々自身のオープンイノベーション事例と言えるかと思います。
具体的には、大企業がスタートアップ投資や新規事業に取り組む際のプロセス全体を支援しています。戦略設計や体制構築といった初期フェーズから、スタートアップの探索・選定、PoC推進、投資後の共創実装・事業化まで、一気通貫で伴走する点が特徴です。
また、投資先探索の支援やCVC担当者向けの育成研修、投資委員会の設計支援、ポートフォリオマネジメント支援など、運営全体の高度化にも取り組んでいます。
――会社の理念やビジョンについて教えてください。
当社の理念は「コーポレートベンチャリングの最適化」です。
私たちはコーポレートベンチャリングを、事業会社が新規事業を創出するための多様な手法を包括する概念として捉えています。資本連携の有無や、社内で事業を生み出すのか、スタートアップと連携して新規事業を創出するのかといった手法を問わず、ベンチャーを生み出す、あるいはベンチャーと連携する取り組み全体を指します。
本来、企業は自社の戦略や目的に応じて最適な手段を選ぶべきです。しかし現実には、新規事業創出はコンサルティング会社、出資はVC、M&Aは専門会社といったように支援プレイヤーが分断されているケースが多いのが実情です。
企業にとって重要なのは、個別の手法にとらわれるのではなく、自社の戦略や組織状況に応じて最適な組み合わせを設計し、成果創出までやり切ることだと考えています。そのためには、最適な手法は企業の特性・成熟度によって異なる前提に立ち、横断した知見を持ってポジショントークに縛られずその実行まで支援できる存在が必要です。当社はその役割を担う存在として取り組んでいます。
また事業会社単独では確立できない業界全体の「形式知化」を行うことが支援者としての我々の使命であり、オープンイノベーションを文化にするための必要不可欠な要素として捉えており、「CVC進化論 2026」というホワイトペーパーの発行など業界の構造を俯瞰的に発信する活動も行っております。
オープンイノベーションを文化にするための挑戦
――経営者になられた経緯について教えてください。
私は現在、株式会社XSproutの代表取締役を務めるとともに、株式会社eiiconの執行役員も務めています。
eiiconで大企業向けの支援を行う中で、ファイナンスの知見を持つVCと組まなければ実現できない取り組みがあると感じていました。そうした支援を実現する組織として、XSproutの設立という選択肢が生まれました。
最初から経営者になりたいと思っていたわけではありません。やりたいことを実現するために会社をつくる必要があり、その役割として経営者という立場を担うことになったというのが実情です。
――経営判断の軸となっている考え方を教えてください。
一番大きな目的は、「オープンイノベーションを文化にする」ということです。
そのためには、大企業やスタートアップを含めたあらゆるステークホルダーがチャレンジし、成功体験を積み重ねていくことが必要だと考えています。
新規事業やオープンイノベーションは不確実性が高く、かつ成果がすぐに出るものではありません。長期的な視点でヒト・モノ・カネ、あらゆる事業投資を受け入れるための指標設計や理解を組織の中に築きながら、成功体験へとつなげていくことが重要です。こうした考え方が規模や所要期間に限らずあらゆる意思決定の根幹になっています。
ビジョン共有と多様性が生む組織
――組織運営において大切にしていることは何でしょうか。
ビジョンの共有です。私たちが取り組んでいる領域は、まだ明確に市場として確立されているわけではありません。特に社外の方と話す機会において、事業の趣旨から適切にお伝えすることなしには簡単にご理解いただけないフェーズであると捉えています。だからこそ、社内メンバーに対しては自社の事業運営目的や向き合っている市場課題をしっかりと共有することを大切にしています。
また、判断の一貫性とスピードも意識しています。組織としての軸がぶれないこと、そして意思決定を迅速に行うことは日頃から大切にしています。
――採用や教育において重視しているポイントを教えてください。
当社はあらゆる産業領域の新規事業の支援やさまざまな企業をつなぐ役割を担っています。そのため異なるバックグラウンドを持つ人材が集まることで、組織としてのアウトプットの幅が広がると考えています。
また、相互に尊重し合える環境も大切にしています。転職やキャリアの選択肢が広がっている時代だからこそ、「誰と働くか」は重要な要素です。互いを尊重できる人たちが集まることで、より良い組織が生まれると考えています。相互理解・尊重ができないと他社同士のオープンイノベーション支援はなしえません。
CVC市場の成熟を支える知見づくり
――今後の展望と課題について教えてください。
CVC運営やベストプラクティスは、日本ではまだ明確に定義されていないと感じています。市場は成長を続けていますが、よりスピード感を持って成熟させていく必要があります。
先述の「CVC進化論2026」の発行にあたっては、国内CVC117社の実態調査をもとに市場の現在地を整理するとともに、実務に活かせる示唆の提示にも取り組んでいます。CVCには成功している企業、始めたばかりの企業、思うように成果が出ていない企業などさまざまな段階があります。それぞれの実態や成功要因を明らかにし、市場全体で共有できる知見として今後も整理していきたいと考えています。
こうした知見が広く共有されることで、CVCの取り組みもより成熟していくはずです。それを後押ししていくことが、私たちの重要な役割だと考えています。
ただし、この領域は企業文化や組織体制など複雑な要因が絡み合うため、一問一答で答えが出るものではありません。時間をかけて向き合う必要があるテーマだと感じています。
感謝と謙虚さを、日々の礎に
――ご自身が大切にしている信条について聞かせてください。
「感謝と謙虚」という言葉は、私自身とても大切にしています。代表として採用や事業戦略の策定・判断の中心にいる立場ではありますが、あくまでも組織の中で最も適した担い手が私であるというだけであり、組織内のあらゆる役割の中に序列は存在しないと考えています。ヒトとヒトが集まって形成しているのが企業であり社会であるという前提の上で、パフォーマンスの総和を最大化できる。形を目指しています。
自分がいたから今があるという思い上がりは持たず、常に謙虚でありたいと考えています。そう思えるからこそ、一緒に働くメンバーを大切にしたいと感じますし、この環境にも自然と感謝の気持ちが生まれます。
――休日のリフレッシュ方法を教えてください。
実はつい最近第一子が誕生したこともあり、プライベートの過ごし方が大きく変化しています。これまで何度も見てきたはずの景色や出来事でも異なる捉え方をするようになった実感があり、自然とリフレッシュする機会になっています。