心つなぐ一杯を届ける——目の前のお客様と向き合い続けた飲食経営と次なる挑戦
株式会社心つなぐ一杯 代表取締役 北村和也氏
株式会社心つなぐ一杯は、ラーメン業態を軸に複数の飲食事業を展開する企業です。ラーメン店に加え、唐揚げ店やフードコート、サービスエリアでのお好み焼き店など、多様な形で飲食の現場に関わっています。本記事では、代表取締役の北村和也氏に、創業の経緯から現在の経営方針、組織づくり、そして今後の展望について伺いました。目の前の一杯とお客様に向き合い続けてきた経営と、その背景にある価値観が語られています。
ラーメンから始まった挑戦
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
主軸はラーメン店の運営です。現在は2店舗を展開し、これを中心に事業を広げています。加えて、唐揚げ店やプール施設内のフードコート、サービスエリアでのお好み焼き店など、業態を広げながら飲食事業全般に取り組んでいます。
――創業の経緯についてお聞かせください。
創業のきっかけはかなり特殊です。29歳頃までは特に仕事に打ち込むこともなく過ごしていましたが、転機となったのが、一緒に立ち上げた先輩の存在でした。
その先輩は、以前は荒れていた時期もありましたが、ラーメンの仕事に向き合い始め、1年ほどで技術を身につけました。そのタイミングで「一緒にやらないか」と声をかけられたことが始まりです。
最初は店舗もなく、花見会場に鍋や食材を持ち込んでラーメンを提供するところからのスタートでした。そんな先輩が真剣にラーメンに向き合う姿を見たことが、自分にとって大きな影響となり、この道に進むきっかけになっています。
「攻める経営」から「生き残る経営」へ
――経営者としての歩みについて教えてください。
私は2代目として経営を引き継いでいます。創業当初は先輩とともに約3年ほど店舗運営に関わる中で、自分でも店を持ちたいという思いが強くなりました。
それまで本格的に働いた経験がなかったこともあり、一度現場で基礎から学ぼうと考え、大手ラーメン店で修行に入りました。店長まで経験し、一通りの業務を理解できたと感じたタイミングで独立を決意しました。
ちょうどその頃、創業者である先輩が店を離れることになり、立ち上げた店舗を引き継ぐ形で経営者となりました。「2代目」としてスタートしましたが、実質的にはゼロから積み上げてきた感覚です。
――これまでの経営判断の軸について教えてください。
創業当初は「攻撃は最大の防御」という考え方で、とにかく売上を伸ばすことに集中していました。経理などの知識も乏しかったため、10点取られても11点取ればいいという発想で経営していたと思います。
一方で、集客に特別な力を入れていたわけではなく、目の前のお客様に丁寧に向き合い、精一杯対応することを大切にしてきました。外からの集客ばかりを意識すると、今来てくださっているお客様がおろそかになってしまうからです。
そうした日々の積み重ねが、結果として口コミにつながっていったのだと思います。
――現在の経営方針について教えてください。
今は無理に攻めるよりも、生き残ることを重視しています。時代の変化が激しい中で、堅実に続けていくことが重要だと考えています。
組織としての一体感を育てる
――組織運営で大切にしていることは何でしょうか。
法人化して7期ほど経ち、店舗数も増えてきましたが、昨年になって初めて「会社としてのまとまりがない」という課題に気づきました。それまでは各店舗が個人事業のような状態で運営されており、ある店舗の売上が伸びても、別の店舗の状況には関心を持たないなど、全体としての一体感に欠けていたと感じています。
店舗数の拡大とともに事業自体は成長していましたが、組織としての意識共有が十分にできておらず、会社として同じ方向を向けていない状態でした。こうした状況を見直す必要があると考え、ここ1年ほどで理念や方針の整備に取り組み始めました。
現在は「当たり前のことを当たり前にする」という基本を大切にしながら、「会社としてやっていることを全員でやっていく」という意識づくりを進めています。ミーティングなどを通じてコミュニケーションの機会を増やし、店舗間のつながりを強化することで、組織全体として同じ方向を向く会社づくりに取り組んでいます。
――どのような人材と一緒に働きたいと考えていますか。
やる気のある人が何よりも大切だと考えています。中でも、将来的に独立を目指しているような意欲の高い人材と一緒に働きたいと思っています。
独立志向のある人は仕事に対する熱量が高く、その姿勢が周囲にも良い影響を与え、店舗全体の活気にもつながります。現在はそうした人材とともに、より良い店舗づくりを進めていきたいと考えています。
技術を武器に海外へ
――今後の展望について教えてください。
これまで約20年にわたりラーメンに携わる中で培ってきた技術やノウハウを、今後は外部に提供していきたいと考えています。これまでは店舗運営を中心に事業を展開してきましたが、これからは自分たちの強みである技術そのものを価値として届けていきたいという思いがあります。
特に視野に入れているのが海外です。日本のラーメン技術を海外に伝えていきたいと考えていますが、自社で現地に店舗を出すとなると、税務や制度、運営面など新たに学ぶべきことが多く、ハードルの高さを感じています。
そのため現在は、すでに現地で飲食事業を展開している企業に対して、ラーメンの技術を提供する形が現実的だと考えています。現地の事情や経営基盤を持つ企業と組むことで、自社の店舗運営で培ってきたノウハウを活かしながら、新たな形で価値を発揮できると考えています。
長年、現場で積み重ねてきた技術を次のステージへとつなげていく——そうした形で、国内にとどまらず海外にも広げていきたいと考えています。
――具体的な取り組みについて教えてください。
これまでに海外企業への技術提供の実績があります。約2年前にはロシアの企業と契約し、技術指導や研修を行いました。内容としては、一定期間の技術指導に加え、必要に応じて現地でのサポートや追加指導を行うなど、柔軟に対応できる形を想定していました。
当初は現地での指導を予定していましたが、渡航直前に戦争が始まり、日本での研修に切り替えて対応しました。先方が来日し、指導を重ねる形で進めていきました。
この経験を踏まえ、現在は海外企業が日本で技術を学び、それを現地で展開する形を軸に取り組んでいきたいと考えています。技術だけでなく、日本のラーメン文化や現場の空気感も含めて伝えていきたいです。現在も海外からのニーズに対応できるようアンテナを張り、声があればすぐに動ける体制を整えています。
自然の中で整えるバランス感覚
――大切にしている価値観について教えてください。
気持ちよく働き、対価を得ることを大切にしています。過度に資本主義に流されるのではなく、時間も大切にしながら、バランスよく働きたいと考えています。がむしゃらに働く時期もありましたが、現在は働き方そのものを見直しています。
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
キャンプなど、自然のある場所に出かけるのが好きです。街から外れることで気持ちをリフレッシュしています。