年10棟に絞り、“顔の見える家づくり”を守る——田辺代表が語る、こだわりと次の一手
株式会社レウス 代表 田辺 勝也 氏
木を使った住まいの空気感を、量産ではなく丁寧に届けたい——。職人としての矜持と経営の現実の間で揺れながらも、「お客様を見る姿勢」を崩さない田辺氏に、会社の現状や独立の経緯、今後の展望を伺いました。
「目が届く範囲」を守るための年間10棟
——御社の現状について教えてください。
現場は職人が4人、事務スタッフが2人、役員が2人という体制が基本。たまに、私も現場に出るといった形です。現在は設計から管理まで私が対応しています。ただ、この体制は正直厳しいと感じていて、設計については2026年の4月から体制を整える予定です。
また、対応する範囲は年間10棟に絞っています。理由は、背伸びはしつつも「まだ目が届く範囲」だと思っているからです。20棟、30棟と増やすと、ただ仕事をこなすだけになってしまう。それが嫌なんです。
こだわれる部分はこだわっていきたい。その意味での年間10棟ですね。ただ今は施工能力というより管理の方で、人員的にカツカツになってきています。理想を守りつつ経営も成り立たせる——そこが難しいところであると感じます。
親方から受け継いだ「お客様を見る」仕事観
——大事にしている理念や価値観を教えてください。
事業理念としては、仕事があるということは困っている人がいて、困りごとの解決をするのが仕事、という考え方です。地域の困りごとをなくす、というイメージですが、まだまだ社内では浸透しきっていません。
だから今は、社員が守ることとして「嘘をつかない」「努力をする」「約束を守る」を進めています。約束については期日を守る、という意味合いが大きいです。
また、もともとは「吐いた唾を飲まない」という感覚でやってきましたが、社訓としては言い方を整えて「嘘をつかない」にしました。建築において信頼が崩れることは深刻な問題なので、そこは特に大切にしています。
この考え方は親方の影響が大きいです。18歳から30歳まで学び、それ以降も親方が亡くなるまで付き合いが続きました。現場数が増えるとお客様との関係が希薄になるから気をつけなさい、とずっと言われてきましたね。
——経営者になられたきっかけは何だったのでしょうか。
独立は、何かをしたくてしたというより、やらざるを得なくなって始めた、という感じです。私は長男で、父親が建築業をやっていて、いつか実家に戻るつもりでした。30歳のとき、幼馴染が家を建てるので「実家に戻ろうか」と父に話し、親方にも説明して辞めることにしました。
ところが父から「お前はうちには来られません」と言われ…。理由はいまだに分かりませんが、それなら自分でやるしかない、と思ったんです。最初は先輩や後輩、知り合いから仕事をもらい、喜んでもらった延長で紹介がつながり、今に至ります。
紹介×発信で受注を整え、リフォームと不動産で備える
——組織運営について、どのように考えていますか。
営業は今もいなくて、紹介が多いので営業は私ひとりです。お客様からの紹介が多いのは結果としてありがたい一方、先読みしづらい不安もあるので、最近はホームページやInstagramなどの発信を事務スタッフに手伝ってもらっています。
見学会も含め、この1〜2年は少しずつ続けていて、新規のお客様も増えてきました。
ただ、年間10棟としている以上パンクしそうなら「今は受けられないので来期になります」と事前に伝えます。
それでも待ってくださる方もいて、うちに来る方は半年後、1年後とゆっくり考えたい方が多い印象です。
——今後の展望についてお聞かせください。
拡大については、代表と同じレベルの人が来れば20棟も理屈では可能ですが、その人は独立するかもしれない。現状、5年後10年後に大きく伸ばすイメージはありません。むしろ新築は今後棟数が減ると思っているので、最近増えているリフォームに注力したいですね。
それと、アパートなど不動産投資もしています。修繕を原価でできるメリットがあり、アパートは年間1棟ずつくらい増やしてきました。仮に仕事が減少しても、1年数か月は収益で賄える状態を守りたいと思っています。
独立した頃から一緒に動く不動産屋さんがいて、情報をもらい、こちらは建築の情報を提供する。専門領域を分け合いながら進めているところです。