空き家再生で社会課題に向き合う――Linkが描く“住まい”の新たな可能性
合同会社Link 代表 野老 瞳氏
社会問題となっている空き家問題と、住まいの確保に困難を抱える人々の存在――合同会社Link(2026年9月株式会社に組織変更準備中)は、その二つの課題に向き合いながら、空き家再生事業を展開している企業です。空き家を再生し、住居として貸し出すだけでなく、一般的には入居を断られやすい人も受け入れる姿勢を大切にしています。本記事では、代表の野老瞳氏に、事業への想いや起業に至った背景、今後の展望などについて詳しく伺いました。
社会課題に向き合う空き家再生事業
――現在の事業内容について教えてください。
現在は、空き家の再生事業を中心に取り組んでいます。社会問題となっている空き家を仕入れたあと、リフォームほど大規模ではないものの、リペアを行い、賃貸物件として再活用しています。
当社の特徴は、単に空き家を再生して貸し出すだけではなく、入居審査の段階で断られやすい方々も含め、幅広く受け入れている点です。住宅確保要配慮者と呼ばれる方々にも住まいを提供することで、空き家問題と住宅困窮という二つの社会課題の解決を目指しています。
また、物件の仕入れから再生、運用まで一貫して行うことで、地域に眠っている空き家の価値を再構築し、持続的に活用できる形へつなげている点も特徴の一つです。
――現在の運営体制についてもお聞かせください。
当社が現在再生・所有している戸数は24戸です。空き家を再現性ある方法で素早く再生して貸し出すことを意識しながら進めています。
また、入居者対応については管理会社へ委託しています。私には薬剤師としての仕事や子育てもあるため、迅速な対応が必要な管理業務はプロに任せることで、入居者の方に迷惑がかからない体制を整えています。
薬剤師として働きながら挑む空き家再生
――経営の道に進まれたきっかけは何でしたか。
私は薬剤師として働いており、日々多くの患者様と接するなかで、薬や健康面だけではなく、生活環境に関する相談を受ける機会も多くありました。特に、住環境の不安定さが体調や生活状況に影響しているケースを目にすることが多く、「住まい」は生活基盤そのものだと実感するようになったんです。
そうした経験から、単に資産形成として不動産に取り組むのではなく、社会課題の解決につながる形で活用できないかと考えるようになりました。
――不動産事業に興味を持ったのはなぜですか。
もともとは、将来的な資産形成として興味を持ったのが始まりです。さまざまな投資について調べたり、セミナーを探したりしていたのですが、株式投資や仮想通貨については知識がなく、あまり魅力も感じませんでした。
そんななかで、空き家再生をテーマにしたセミナーに参加する機会がありました。そこで空き家を再生し、人が住める状態に戻していく事業を知り、やりがいを感じたんです。もともと家を見ることが好きだったこともあり、不動産は自分に合っていると思えたのも大きなポイントでした。
空き家という社会課題に対して、不動産を通じて価値を再生し、地域や人の役に立てる点に強く惹かれました。「これなら自分自身も事業として取り組みたい」と思ったところから実際に物件取得や再生活動を始め、現在の事業につながっています。
――現在の組織体制について教えてください。
現在、法人としては私一人で経営していますが、実務面では主人も事業に関わっており、物件対応や業者との調整などを協力しながら進めています。少人数体制のため、そうした対応や調整も現場に近い距離で進められていると感じています。
設立当初は主人が会社員として勤務していたため、副業に関する制約もあり、法人代表は私が務める形になりました。また、もともと私自身が空き家再生事業に強い関心を持っていたこともあり、主体となって事業を立ち上げる流れになりました。
「空き家」「住まいに困っている人」――二つの社会課題に向き合う
――事業を通じて感じていることはありますか。
空き家問題だけでなく、「住まいを確保できない方」が想像以上に多いという現実を強く感じています。そして当社としては、空き家の再活用と住宅支援を結び付けることで社会課題に対して持続的にアプローチできる点に、この事業の可能性を感じています。
実際に入居募集を行うと、住宅確保要配慮者の方からのお問い合わせも多く、特にシングルマザー世帯からのご相談が増えている印象があります。そのため現在は、シングルマザー支援を行う団体とも連携を進めながら、住まいの提供だけにとどまらない支援の形を模索しているところです。
例えば、クロス貼りなどの内装作業を通じて収入を得られる仕組みづくりや、将来的には物件取得を通じて大家業へチャレンジできる流れをつくるなど、住まいを起点に自立支援へつながるモデルを構築していきたいと考えています。
――その取り組みをどのように広げていきたいと考えていますか。
今後は、空き家活用の方法をマニュアル化し、再現性のある形にしていきたいです。特別な知識や経験がなくても取り組めるようになれば、住まいに困っている方の新たな働き方や収入源にもつながると思っています。
また、同じように空き家再生に取り組む人が増えることで、地域に眠る空き家の活用もさらに進んでいくのではないかとも感じています。
新たな空き家の活用も視野に入れて
――空き家活用について、今後構想していることはありますか。
空き家を所有されている方のなかには、「実家なので簡単には手放せない」「管理は負担になっているが、売却には抵抗がある」といった悩みを抱えている方も多くいらっしゃいます。そのため今後は、空き家を売却せずに有効活用できる仕組みづくりにも取り組んでいきたいと考えています。
例えば、必要最低限のリペアを行い、賃貸として運用できる状態にすることで、固定資産税などの維持コストを上回る収益につなげられる可能性があります。空き家を“負担”として抱え続けるのではなく、地域資源として循環させていける形を目指せれば理想的です。
一方で、空き家再生には資金面の課題もあります。築年数の古い物件が多いため、金融機関からの融資において物件評価が付きにくいケースも少なくありません。耐用年数を超えていることで、事業性よりも物件価値が優先されてしまう場面もあります。
そのため今後は、物件単体ではなく、空き家再生事業そのものの継続性や社会性を評価していただけるよう、実績を積み重ねていきたいと考えています。
ほかにも、法律や制度面でも、市街化調整区域や再建築不可物件など、空き家活用を進める上での制限はまだ多く残っています。それでも、空き家を再生し、住まいに困っている方の支援につなげられる可能性は大きいはずです。
今後も地域に眠る空き家を活かしながら、住まいを通じて社会課題の解決に貢献していきたいです。