諦めない者だけが道を切り拓く――有限会社オフィスZPI 加藤強氏が語る挑戦とものづくりの信念

有限会社オフィスZPI 代表取締役 加藤 強氏

有限会社オフィスZPIは、釣り具のカスタムパーツを企画・製造・販売する企業です。単なる“改造パーツ”ではなく、釣り人がより深く釣りを楽しむための「快適性能」を追求したものづくりを行っています。その発想の原点にあるのは、代表、加藤強氏がオートバイレースで培ってきた、人と機械の関係性に対する独自の感覚でした。本記事では、独自の開発思想や挑戦を続ける理由、そして社員と共に歩む現在のものづくりについて伺いました。 

“釣果直結型”を追求する、カスタムパーツ開発 

――現在の事業内容について教えてください。

当社では、釣り具のカスタムパーツを企画・製造・販売しています。イメージとしては、車やオートバイの世界にある改造パーツを、釣り具に置き換えたようなものです。既製品をそのまま使うのではなく、自分に合った状態へ調整し、より快適に使うためのパーツを作っています。

見た目を変えることが目的ではありません。私たちが大切にしているのは、「釣り人がより釣りを楽しめること」です。釣りは魚が釣れてこそ面白い。だからこそ、最終的には、釣果につながるかを重視しています。いわば“釣果直結型”のカスタムパーツを作っている感覚です。

――他社との違いや、特徴を教えてください。

私はもともとオートバイレーサーだったので、商品づくりのベースにはオートバイと人の関係性があります。例えば、ハンドル一つ取っても、単純に格好良くするためではありません。水中で起きている変化を、手元から感じ取れるように設計しています。

釣り人は水中を見ることができません。だからこそ、手に伝わる情報から頭の中で状況を組み立てる必要がある。その感覚をどう高めるかを考えています。私の場合、人と機械の関係性の中で考えてきたことを表現する場所が、たまたま釣り具だったという感覚なんです。

「快適性能」が生み出す驚きと感動

――企業理念として掲げる「快適性能」について教えてください。

私は「快適性能」というものを、究極の性能だと思っています。もちろん、釣具店で買ったリールをそのまま使っても魚は釣れますし、楽しむこともできます。


その上でカスタムするのであれば、「買って良かった」と感じてもらわないと意味がないと思うんです。そのためには、驚きや感動が必要です。ハンドルを変えただけなのに「こんなに軽いのか」と感じたり、今まで分からなかった水中の情報を感じ取れたりする。そういう変化が、釣りの楽しさにつながっていくのだと思います。

――お客様へどのような価値を届けたいですか。

実際に使った時に、新しい魚と出会えたり、自分の思った通りに操作できたりすることで、また次の感動が生まれます。その一連の体験を全て含めて、「快適性能」だと思っています。

既製品にも高い性能はあります。その上で、 私たちは、材料や加工方法、設計を工夫しながらさらに性能を高めていく。初心者でもベテランでも、驚き感動してもらえる商品を作りたいと思っています。

レーサー時代の経験が築いた、ものづくりの原点 

――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。

もともとはオートバイのレースが大好きで、自分自身も選手として走っていました。ただ、怪我をしてしまい、レーサーとしての道を続けることが難しくなったんです。それでも、「勝負すること」や「世界一を目指すこと」への想いは、自分の中から消えることはありませんでした。

その後、レース時代のメカニックだった仲間が、いつの間にか釣りのトーナメントプロになっていたんです。そこから少しずつ、釣り業界と関わるようになりました。

当時、私はマグネシウムという素材に大きな可能性を感じていました。レース業界では使われていた素材ですが、釣り具業界では加工の難しさから、ほとんど扱われていなかったんです。そこで、「この素材を釣り具に使ったらどうなるんだろう」と考えるようになりました。

ただ、その頃はマグネシウムを加工できる工場はなく、実際に工場を回っても、「危ないから無理」と断られることばかりでした。それでも、私の中では「誰もやらないなら、そこにチャンスがある」という感覚の方が強かったんです。だからこそ、諦めずに加工先を探し続けました。

最終的には、マグネシウム製のスプール開発へとたどり着きました。実際にプロ選手や釣具店の方に使っていただくと、高い評価をいただきました。正直、当時は自分自身も、そこまで高い評価をもらえるとは思っていませんでした。でも、その反応をきっかけに、少しずつ自分たちのものづくりが広がっていきました。

振り返ってみると、経営者になりたかったというより、「まだ誰も形にしていないものを作りたい」という想いで、ここまで走り続けてきたのだと思います。

社員と築く“原点回帰”のものづくり 

――社員の皆さんとの関わりについて教えてください

当社の社員は、みんな釣りの専門学校出身なんです。釣りに関しては社員の方が詳しいことも多く、私が教えてもらう場面もあります。

もちろん、経営者と従業員という立場ではありますが、どちらかというと「自分にできないことを助けてもらっている」という感覚の方が強いですね。

ありがたいことに、10年以上働いてくれている社員も多いです。コロナ禍では苦しい時期もありましたが、社員のみんなが支えてくれたからこそ、ここまで続けてくることができました。今も「もう一度勢いを取り戻したい」という想いを共有しながら、一緒に前を向いて取り組んでいます。

――コロナ禍の苦しい時期を経て、組織や事業の考え方に変化はありましたか。 

2019年頃から、「総合メーカーとしてやっていこう」と動き始め、リールや竿、糸、針まで含めて、自分たちで幅広く展開していこうとしていました。

ただ、その翌年にコロナ禍が始まりました。イベントは全てなくなり、営業に行くこともできない。頑張って作った製品が安売りされていく状況は、本当に苦しかったですね。

その時に「このまま終わるのか、もう一度立て直すのか」を真剣に考えたんです。そこで、「原点に戻ろう」と思いました。一度やめていたカスタムパーツも復活させて、「本当に欲しいと思ってもらえるものを作る」という原点のものづくりへ戻りました。

挑戦をやめない

――挑戦を続ける原動力になっているものは何でしょうか。

私は、「諦めない人が結局勝つ」と思っています。実際、世の中で誰もやっていないように見えることも、途中で諦めてしまった人が多いだけだと感じるんです。だからこそ、最後までやり続けた人にしか見えない景色があると思っています。

昔の日本の経営者や技術者は、無茶をしながらも道を切り開いてきたと思うんです。だから私も、まだ挑戦をやめたくないですね。もう一度、社員のみんなと一緒に勢いを取り戻したい。そして、自分たちが本当に「これがいい」と思えるものを、胸を張って作り続けていきたいと思っています。

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