音を「作る」だけで終わらせない──audio studio 響・梶野俊夫が貫いてきた音響の仕事

有限会社 audio studio響 代表 梶野 俊夫氏

ゲームや映像、アニメ、オーディオドラマなど、作品の世界観を支える「音」。有限会社audio studio響は、効果音や音響演出を軸に、長年にわたり多様なジャンルの制作に関わってきました。本記事では代表の梶野俊夫氏に、現在の事業内容やこれまでの歩み、仕事への向き合い方、そして今後の展望についてお話を伺いました。

音を「作る」だけで終わらせない、audio studio響の現在地

━━ 現在の事業内容について教えてください。

自分の会社では、音響効果や音響演出を中心に仕事をしています。ゲームであれば効果音を作り、それを映像やシステムに合わせて載せていく。映画や映像作品でも、SEを作ってミックスまで行うという形です。いわゆる「音を作る」だけで終わらせるのではなく、作品にきちんと合う形まで仕上げるところを担っています。

曲をつける仕事というよりは、音そのものの演出を担当している感覚ですね。

その中で、フォーリー(foley)と呼ばれる手法も多く取り入れています。フォーリーとは、映像に合わせて実際の音を収録し、タイミングを合わせていく音響技術の一つです。たとえば足音や衣擦れ、物が触れる音などをその場で再現しながら録音し、映像に重ねていきます。こうした工程を通じて、映像だけでは伝わらない質感や空気感を補い、作品全体のリアリティを高めていきます。

http://codama.co.jp/foley/foley_info

現在は、アニメやゲーム、オーディオドラマなどが中心です。MP3で配信される作品や、以前であればCDとして販売されていた作品にも関わってきました。ジャンルを限定せず、「音が必要とされるところ」で仕事を続けています。

━━ 御社の強みはどこにあると感じていますか。

一番大きいのは、ワンストップで対応できるところだと思っています。SEを作るだけでなく、実装やミックスまで含めて対応できます。

特別なことをしている意識はありません。長年この仕事を続けてきた結果、自然とできることが増えて、できないことがあまりなくなったという感覚です。できない理由を探すより、どうやったら形にできるかを考える。その積み重ねが、今の仕事のスタイルになっています。

━━ その対応力やスピード感は、どのように培われたものなのでしょうか。

自分では「早くしている」という意識はあまりなくて、早く作るのが普通だと思ってやってきただけです。以前、スタジオで仕事をしていた頃は、1時間単位で時間が決まっていて、その中で音を作り、映像に合わせて納品するのが当たり前でした。限られた時間の中で形にする経験を重ねてきたことで、自然と今のスピード感になっています。

結果的に、それが信頼につながっていると自分では感じています。

ゲームから映画へ──音と向き合い続けてきたキャリア

━━ これまでのキャリアについて教えてください。

専門学校に在学中、紹介をきっかけにMAスタジオに入り、CMなどの案件に関わったのが最初です。その後、ゲーム会社に入り、効果音を中心に仕事をしていました。スーパーファミコンのタイトルをはじめ、さまざまなゲームに携わっています。

当時はMAスタジオで仕事をしていたので、限られた時間内に音を作り、映像に合わせてその日のうちに納品するのが当たり前でした。その中でいくつか音を作り、組み合わせて仕上げる。その繰り返しをしていたので、音を早く作ること自体が特別だという感覚はありませんでした。

そうした経験を重ねる中で、「早く作る」というよりも、「決められた時間内で形にする」という意識が自然と身についていったと思います。

━━ ゲームの現場で感じた変化はありましたか。

ゲームの環境は、時代とともに大きく変わっていきました。PlayStationの時代に入って、音のクオリティや表現の幅が一気に広がり、ファミコンのピコピコなっている音(PSG音源)からPSやセガサターンなど音源がPCM音源移行していきました。

音をどうやってきれいにするか、どうやってリアルに聞かせるかを考える機会が増えていく中で、ゲーム会社にいるよりも、映画の現場で音を学んだ方がいいのではないかと考えるようになりました。

━━ 映画の世界へ進んだ理由は何だったのでしょうか。

サラウンドやフォーリーを、きちんとやりたいと思ったのが一番の理由です。映画の現場では、それが当たり前に求められるので、きちんとした環境で学びたいと思いました。実際に映画の音響効果会社に入り、音を収録し、作り込んでいく経験を積むことができました。

ただ、映画だけをやり続けることにも、次第に物足りなさを感じるようになりました。ゲーム、映画、ドラマ、アニメなど、ジャンルを限定せず、音の仕事をすべて含めてやりたい。そう考えるようになり、独立を意識するようになりました。

組織を大きくしない選択と、仕事の向き合い方

━━ 独立して会社を立ち上げた背景を教えてください。

一緒に仕事をしていた人と離れるタイミングがあり、そのときに自分の会社を作ろうと決めました。ちょうど制度的にも有限会社がなくなっていく時期でしたが、当時の状況を考えた上で、有限会社という形を選びました。まずは一人でできる形を作り、無理に大きくしないことを前提にスタートしています。

それまではフリーとして、映画やゲーム、遊技機などの仕事を続けていました。その中で、音響の仕事だけでやっていける形を自分なりに作りたいという思いが強くなっていきました。フリーの仕事で得た収益をもとに、会社を立ち上げるという流れです。

━━ 会社を立ち上げる際に、大切にしていた考え方は何でしょうか。

最初から大きな組織を作ろうとは考えていませんでした。音響効果をメインにした会社を大きくしていくのは、正直かなり難しいと思っていたからです。映画やドラマの世界を見ても、大きな組織というより、少人数やフリーの集まりで成り立っているケースが多いと感じていました。

だからこそ、まずは自分一人でできる範囲をしっかりやる。その上で、必要なときに柔軟に人と組める形を作ることを意識していました。

━━ 社員を増やさず、一人で続けている理由は何ですか。

自分としては、一人でできるところまでやり、足りない部分は横のつながりで補う形が合っていると感じています。ゲーム1本を丸ごと任されるような仕事であれば、一人でも対応できますし、難しい部分や人数が必要な場合は、スタジオや他の人と組むこともできます。

全社員で抱え込むのではなく、状況に応じて柔軟に動けること。その身軽さを大事にしながら、今の形を続けています。

広げたい領域と、これからの展望

━━ 今後、力を入れていきたい分野はありますか。

アニメやゲームの仕事は、もう少し広げていきたいと考えています。これまでゲームでは、いわゆる一般的なタイトルを中心に関わってきましたが、最近はコンシューマーゲームの環境自体も変わってきていると感じています。以前に比べて、映画やアニメと同等レベルの演出や音響クオリティが求められるようになっています。

ただ、時間をかけて作り込む仕事については、これまでずっとやってきました。音を一から作り、その作品だけの音を用意すること。

それはゲームにおいては普通のことだと思っていますし、そこをきちんとやりたいという気持ちは今も変わりません。作品ごとに必要な音を考え、用意する。その積み重ねを続けていきたいと思っています。

━━ 現在感じている課題はどこにありますか。

一番の課題は時間ですね。音そのものは、持っているものを組み合わせれば形にできる場合も多いのですが、自然音の収録だけは、どうしてもコントロールできない部分があります。

例えば、街の雰囲気や鳥の鳴き声などは、「この感じがほしい」と言われても、実際に現地へ行ってみないと分かりません。理想の音が取れるまで、何度も足を運ばないといけないこともあります。そこは時間がかかる部分だと感じています。

━━ それでも続けていける理由は何でしょうか。

自然相手の部分を除けば、「できない」と思うことはあまりありません。時間さえ確保できれば、形にできるという感覚は、今も変わっていません。難しいと言われることでも、どうやったら実現できるかを考えてきた経験があります。

だからこそ、音を一つひとつ積み上げていく仕事を、これからも続けていきたいと思っています。

音と向き合い続けるための、個人的なスタンス

━━ 仕事を続ける上で大切にしていることは何ですか。

特別なことをしている意識はなく、ずっと同じことを続けている感覚です。音をどうしたらきれいにできるか、どうしたら作品に合うかを考え続けてきました。それが自分の中では当たり前になっています。

何か新しいことをしようというよりも、今ある音をどう使うか、どう組み合わせるかを考える。その積み重ねが仕事になっているという感覚ですね。気づいたら長く続いていた、という感じです。

━━ 長く仕事を続けてきた中で、意識していることはありますか。

長くやってきた分、求められたときに「大丈夫です」と言える状態でいることを大事にしています。すべてが完璧にできるという意味ではなくて、どうやったら対応できるかを考えられる状態でいる、ということです。

できない理由を先に出すのではなく、「どうしたら形になるか」を考える。その姿勢を保ち続けることが、結果的に信頼につながってきたのかなと思っています。

━━ 今後も変わらず続けていきたいことは何でしょうか。

音の仕事を、特別なものにしすぎず、これまで通り続けていくことです。自分にとっては、これまでずっとやってきたことです。

いつ声がかかっても対応できるように、音と向き合い続ける。それを淡々と続けていくことが、自分にとって一番自然な形だと思っています。これからも、変わらず音の仕事を続けていきたいですね。

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