Recustomerが描く次章――オンリーワンビジネスが拓く購入後体験×トランザクションモデル
Recustomer株式会社 代表取締役 柴田 康弘氏/社員 山角亮介氏・古川晶子氏
Recustomer株式会社は、決済から商品追跡、返品・交換・キャンセルまで、購入後を起点に、ECの購入体験を一気通貫で向上させるプラットフォーム「Recustomer」を開発・運営しています。代表の柴田氏は、受託開発からSaaSへと大胆に舵を切り、購入“後”の体験に特化した独自のポジションを築いてきました。本記事では、創業の背景や事業転換の裏側、海外展開への構想、そして経営者として大切にしている哲学について伺います。
目次
購入“後”に特化するオンリーワン戦略
――御社の事業内容を教えてください。
ECサイトを運営する小売事業者向けに、購入後の体験を支援するプロダクトを開発しています。返品・交換や注文キャンセル、配送状況の確認といった領域を整え、オンライン購買後に残りがちな不安や面倒さを減らすことが役割です。
お客様は自社ECを展開する企業が中心で、約7割がファッション関連。アパレルや革製品をはじめ、インテリアや電化製品、食品飲料など幅広い業種に導入されています。
――競合環境と、御社ならではの強みは何でしょうか?
国内には競合はほぼおらず、海外に4〜5社ほど存在している状況です。
競合が少ないこと自体が強みというより、「購入後体験」という論点に正面から向き合うプロダクトが国内市場にほとんどなかった点が、独自性につながっていると考えています。
だからこそ、課題の重要性をどう伝え、どう“優先順位”を上げていくかが、事業成長に直結するテーマになっています。
受託開発からSaaSへ――コロナ禍が生んだ転換点
――創業のきっかけと、起業を選んだ理由を教えてください。
2017年の創業当時、もともと大学時代から、いわゆるフリーランスのような形で仕事を請け負い、納品することは個人でやっていました。それを加速させる意味合いで法人化した面があります。
加えて、せっかく会社をやるなら、個人で小さく稼ぐだけではなく、チームでより大きなことを成し遂げたいという思いがありました。優秀なメンバーと一緒に、1人では到達できない場所を目指したい。その感覚が起業の選択を後押ししました。
――事業内容はどのように変化してきたのでしょうか?
2017年から2021年頃までは、受託モデルで開発を行っていました。発注を受けて開発し、納品する形です。初期は「何でも作る」スタイルに近く、採用系のシステム開発などを手がけることも多かったです。
その後、2022年から「Recustomer」という製品を開発し、販売する形へと転換しました。つまり、受託から自社プロダクトへとビジネスモデルを変えたんです。この切り替えによって、提供価値を積み上げながら、継続利用される形の事業へ移行できた手応えがあります。
――これまでで最大のターニングポイントは何でしたか?
最も大きかったのはコロナ禍です。受託開発自体は同じでも、領域の選び方が変わりました。「これからはEコマースに全振りしよう」という判断があり、そこから動きが加速しています。
具体的には、2019年に日本へ入ってきたShopifyに早い段階で着目し、Shopifyの構築代行を事業として立ち上げました。約2年間ほどShopify専門のシステム開発に携わっていましたが、非常にうまくいったんです。
その結果、お金と時間に余裕ができ、腰を据えて自社プロダクトを開発できる状態が整った。ここが、受託からSaaSへ移るうえでの最大の転換点だったと捉えています。
SaaSからフィンテックへ――3年で売上10倍を狙う構想
――今後伸ばしていきたい分野や、新たな挑戦について教えてください。
Recustomerは月額利用料をいただくSaaSモデルです。ただ現在は、決済手数料のように取引に連動する収益、いわゆるフィンテック要素も取り入れ始めています。今はSaaSが中心ですが、数年でフィンテックのプロダクトを大きく拡大していくことが3年の目標です。
こうした取引連動型モデルを3年で売上の半分以上へ拡大し、SaaSを土台にトランザクション収益を厚くしていきます。
――3年後の売上目標はどの程度を見据えていますか?
3年後は、今の売上「10倍」を目指しています。
海外戦略も見据えていますが、正直なところ国内だけでも10倍が狙える手応えがあります。毎年2倍強で積み上げていけば現実的だという見立てです。
――現在直面している事業課題は何でしょうか?
特徴的なのは、いわゆる組織の問題、人の問題がほとんどない点です。多くの経営者が「お金・組織・事業」の3つで悩むことが多い中、こちらは事業課題に集中できている状態だと認識しています。
そのうえで、課題の中心はマーケティングです。もうひとつは、ビジネスモデルの転換、つまりトランザクションに応じて伸びる収益構造へ寄せていく部分になります。方向性は見えているものの、目指す地点に到達するには、まだまだやるべきことが多い。そこが現状の率直な課題感です。
ブランドで選ばれるプロダクトへ――マーケティングの思想
――オンリーワンのサービスをどのように伝えていますか?
唯一無二のソリューションだからこそ、Recustomerというブランドの確立が重要だと考えています。プロダクトを使っていること自体が、「顧客体験が良い」という認知につながる状態をつくりたい。機能だけでなく、“使っていることが価値になる”存在を目指しています。
「Recustomer=良いサービス」という印象を、発信やクリエイティブの一貫性で積み上げていく。そうした目に見えない価値を丁寧に形にしています。
――購入後体験の重要性をどう広げていこうとしていますか?
購入前の領域には、広告やLINEでのチャットボット接客など多くのソリューションがあり、各社が取り組んでいます。一方で、EC全体の成長率は以前より緩やかになってきていると感じています。
だからこそ、購入後も含めた全体設計の必要性や、購入後の体験が事業成長に直結することを早期に認識してもらう必要があります。競合がいない分、「課題の優先順位を上げる」ことが重要です。オフラインや広告など多様な手法で、その価値を伝え続けています。
――営業・マーケティング手法にはどのような特徴がありますか?
広告による訴求に加え、オンライン・オフラインで小規模なイベントも開催。自社主催やスポンサー共催など、手法は多角的です。
それでも目指す地点にはまだ足りない感覚があります。購入後体験の価値を浸透させるには、プロダクトだけでなく、伝え方と接点づくりをさらに磨く必要があると考えています。
組織課題ゼロを実現する経営スタイル
――経営者として大切にしている哲学を教えてください。
自分のスタイルは、「裏と表がない」ことです。
見栄を張らず、等身大で隠し事をしない。弱みも出すことが信頼につながると考えています。格好をつけた中身のない会話や上滑りは避けたい。本音で向き合う姿勢を大切にしています。
また、誰に対しても媚を売らず、全員に同じ対応をすることもポリシーです。そのフェアさが、組織の健全性につながっていると感じています。
――社員の方から見て、代表はどのような人ですか?
(山角亮介氏からの回答)
代表が語った「裏表がない」という点は、近くで働いていても強く感じます。そのうえで、センスのような定性的な判断、つまり「良いかどうか」に対する感度が高い印象があります。
細部のクオリティや、ブランドの一貫性にこだわる姿勢が、意思決定の随所に出ている、という捉え方です。
加えて、自分が決めたことに対して“先が見えている”ため、従業員側からすると働きやすい、という実感があります。
方向性が明確なので、迷いが少なく、前に進みやすい。組織課題が大きくならない背景には、こうした見通しの良さも関係しているのかもしれません。
アジア、そして世界へ――“ショッピングのインフラ”をつくる
――将来的に社会へどのような影響を与えたいと考えていますか?
ECが日本で本格的に始まってから、まだ30年も経っていません。オンラインショッピングは当たり前になりましたが、不満や不安、面倒さは依然として残っています。そこをシンプルにし、不安のない体験へ近づけることが社会的なミッションです。
まずは日本で実現し、その先には東南アジアへも広げたい。オンラインで買うことが“自然に気持ちいい体験”になる状態を、地域を越えて提供していきます。
――海外展開に向けた具体的な課題と進め方を教えてください。
主に我々のビジネスだと、最初にやらなければならないのが言語対応です。日本語だけでなく、英語やタイ語など多言語に対応する設計を整えることが前提になります。
続いて必要なのが通貨対応で、円以外にバーツやシンガポールドルなど各国通貨へ広げていく作業があります。そのうえで、現地の物流パートナーと提携し、初めて販売が可能になります。
初期の整備は手間がかかりますが、そこまでやり切れば参入障壁にもなります。現在は販売代理店を中心としたパートナーベースで展開しており、将来的に注力国が定まれば自社での営業も検討する方針です。
――最終的にどのような会社を目指していますか?
創業時から「ショッピングの体験を良くする会社」と決めており、闇雲に領域を広げるつもりはありません。
ECであれ店舗購入であれ、ショッピングに関する体験をより良くするインフラを、日本だけでなくアジア、さらにヨーロッパも含めて、世界で使われるプロダクトにしていく。それが究極的に成し遂げたい姿です。
仲間と挑むスタートアップの時間
――休日のリフレッシュ方法や趣味を教えてください。
最近、会社のメンバーとスノーボードに行きました。身体を動かすことやアウトドアが好きで、スポーツやマリンアクティビティ、ウィンタースポーツなど幅広く楽しんでいます。サウナやキャンプにもよく行きます。
一方でインドアの趣味もあり、ポーカーや将棋、麻雀もします。趣味は一人で完結するより、メンバーと共有したいタイプです。貴重な時間を投資してくれている仲間に、成功だけでなく楽しい思い出も届けたいと思っています。
――最後に、これから起業する方・経営者へのメッセージをお願いします。
私自身、創業して最初の5年ほどは、「社長とはこうあるべきだ」という周囲の理想像に縛られていました。できもしないことを無理に演じようとしたり、形だけを整えようとした時期もあります。ただ、それはどこか息苦しく、自分らしさを失っていたと感じています。
成功する経営者像はひとつではなく、十人十色だと思います。自分の強みを伸ばし、弱みは仲間の力で補えばいい。誰かの型にはまるのではなく、自分らしく経営することを大切にしてほしい。そこにこそ、持続する力が宿るはずです。