「伴走型DX」で労務の未来を切り拓く。酒類商社から社労士へ、異色のキャリアが導く「守り」の本質
アルク社会保険労務士法人 代表社員 香山政人氏
社会保険労務士業界において、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉が躍る昨今。しかし、真にシステムを使いこなし、企業の成長に歩調を合わせる「伴走者」はどれほどいるでしょうか。アルク社会保険労務士法人の代表、香山政人氏は、営業の最前線で培った類まれなる対人力と、ITツールへの深い造詣を武器に、アナログな業界に新風を吹き込んでいます。
酒類商社の営業という、人間力が試される過酷な環境から一転、国家資格を手に「手に職」の世界へ。異色の経歴を持つ香山氏が掲げるのは、単なる手続き代行ではない、顧客の事業リスクを最小化し生産性を最大化する「攻めの労務管理」です。現在は、マネーフォワード クラウドをはじめとするITツールの導入支援に特化し、上場企業から上場準備企業やスタートアップまで幅広い企業の信頼を勝ち得ています。「士業の道は武士道である」と語る香山氏の、経営哲学と未来への展望を伺いました。
目次
マネーフォワード特化のDX推進で、企業の労働生産性を引き上げる
——アルク社会保険労務士法人の事業内容と、他社にはない強みを教えてください。
私たちは社会保険労務士法人として、一般的な手続き業務や給与計算はもちろん、特に「DXを活用した業務効率化」に注力しています。この業界は未だにアナログな部分が多いのですが、弊社はマネーフォワード クラウドを中心としたシステム導入に特化し、チャットツール等を駆使して徹底的なスピードアップと労働生産性の向上を追求しています。
大きな特徴は、単に「システムを導入して終わり」ではなく、その後の運用まで責任を持つ「伴走型サポート」です。例えば、顧問社労士が別にいる企業様から「システム導入とレクチャーだけを依頼したい」というご相談をいただくこともあります。既存の社労士先生が対応できないIT領域を弊社が補完する、といった柔軟な関わり方ができるのも強みですね。現在は法人化を経て、スタートアップから上場企業まで、企業の成長ステージに合わせた最適な労務基盤の構築を支援しています。
酒類商社の営業から社労士へ。「手に職」を求め、ゼロから築いた信頼
——営業職から社労士という、全く異なる分野へ転身されたきっかけは何だったのでしょうか。
私のキャリアのスタートは人材業界、そして2社目は酒類商社の営業でした。特にクラフトビール・ウイスキーの営業時代は、夜遅くまでお客様と向き合う非常にハードな環境でしたが、そこで鍛えられた「人間力」や「営業力」は今でも私の土台になっています。ただ、心身ともに削られる感覚もあり、「一生続けられる、自分にしかできない武器を持ちたい」と強く思うようになったんです。
そこで「手に職」をつけるべく、当時から縁のあった人材という軸から社労士試験への挑戦を決めました。独立したのは約3年前ですが、最初の1年は本当に必死でしたね。これまでの人脈への挨拶回りを地道に行い、1件1件の案件に一切手を抜かず全力で応えてきました。ある会計事務所との出会いから一気に顧客が増え、順調に拡大してきましたが、根底にあるのは「お客様の期待を裏切らない」という泥臭い積み重ねだと思っています。
月1出社のバーチャルオフィス体制。プロとしての「根拠ある回答」を徹底
——組織運営において、社員の皆様とのコミュニケーションや教育で意識されていることはありますか。
現在は正社員3名の組織ですが、採用エリアは限定せず、大阪在住のスタッフもいます。基本的にはバーチャルオフィスとチャットベースのフルリモートに近い環境ですが、月に一度は全員で集まる「リアルなコミュニケーション」を大切にしています。
教育面で厳しく伝えているのは、「プロ意識」です。労務相談に対する回答が、単なる「個人の感想」になってはいけません。通達、判例、法律。これらを必ず確認し、根拠を示した上で回答するよう徹底しています。営業であれば経験則による主張も強みになりますが、私たちの仕事は法令遵守が前提。スタッフには、自分たちの解釈を押し付けるのではなく、プロとして客観的かつ確実な道標を示せる存在であってほしいと考えています。
大阪・福岡への拠点分散。災害時でも「給与を止めない」安心感を届ける
——今後の展望や、新たに取り組みたい挑戦について教えてください。
2年以内に大阪、5年以内に福岡へと支店を展開する計画を立てています。これは単なる規模拡大が目的ではなく、BCP(事業継続計画)の観点が非常に強いです。具体的には「首都直下型地震」などの災害リスクを想定しています。私たちが預かっているのは、従業員の皆様の生活の糧である「給与計算」です。
もし東京が被災しても、大阪や福岡で業務が継続できれば、給与の支払いを止めることなく企業の混乱を最小限に抑えられます。ここまで踏み込んでリスク分散を考えている社労士事務所は少ないかもしれません。しかし、「預けた以上は絶対に安心だ」と心から思っていただける品質を提供することが、私たちの使命です。また、組織としても私個人の意思決定に頼りすぎない「ナンバー2」の育成を急ぎ、どの拠点でも高品質なサービスを均一に提供できる体制を構築していきます。
多忙な経営者の傍ら、大学院で「法学」を学び直すストイックなリフレッシュ
——お忙しい毎日かと存じますが、プライベートでのリフレッシュ方法などはありますか。
正直なところ、365日ほぼ仕事のことを考えているので仕事がリフレッシュです。ただ、2人の子供がいるので、休日に公園へ連れて行ったり、習い事の送り迎えをしたりする時間は大切なひとときですね。
最近、自分にとっての新しい「リフレッシュ」であり挑戦なのが、大学院への進学準備です。私は文学部出身で、法学を体系的に学んだことがないのがコンプレックスでした。実務経験は積んできましたが、今一度「学問」として法律を深く学び直したい。それが、結果としてお客様へのより質の高い提案に繋がると信じています。仕事とプライベートの境目がない「士業(サムライ)」としての生き方を、これからも楽しんでいきたいですね。