地域を動かす燃料配送――ナカト産業が描く和歌山のエネルギーインフラと挑戦
ナカト産業株式会社 代表取締役 中井政斗氏
ナカト産業株式会社は、軽油・灯油・重油といった燃料をタンクローリーで配送する石油小売事業を展開しています。一般的なガソリンスタンドのように店舗を構えるのではなく、配送に特化した形で事業を行っている点が特徴です。燃料は建設現場やホテル、農業・漁業など地域のさまざまな産業にとって欠かせないエネルギーであり、その供給を支える役割を担っています。本記事では、代表取締役の中井氏に、事業の特徴や経営の背景、組織づくりの考え方、そして今後の展望について伺いました。
目次
配送に特化した石油小売事業
――現在の事業内容について教えてください。
当社は石油の小売販売を行っていますが、一般的なガソリンスタンドとは形態が異なります。店舗を構えるのではなく、タンクローリーで燃料を届ける「配送専門」の事業です。ガソリンスタンドのようにお客様に来ていただくのではなく、こちらから現場へ燃料を運ぶ形になります。取り扱っている燃料は、主に軽油・灯油・重油の3種類です。
――主な販売先はどのような企業ですか。
主な取引先は、土木・建築業、ホテル業、そして農業や漁業などの一次産業です。当社は燃料を商社から直接仕入れ、タンクローリーで各現場へ配送しています。土木・建築や農業の現場では重機や農業機械の燃料として使用され、ホテルでは空調設備やボイラーの燃料として使われています。
高校生のアルバイトから始まったキャリア
――経営者になられた経緯を教えてください。
私がこの仕事に関わり始めたのは高校生の頃です。父が経営していた会社でアルバイトとして働き始めたのがきっかけでした。当時は従業員として現場に入り、実際の業務を経験していました。
その後、父が60歳を迎えるタイミングで「仕事を引退する」という話がありました。父の誕生日に会社を辞めると以前から聞いていたのですが、その日になって「会社を継ぐなら続けてもいいし、継がないなら事業は畳む」という話をされたのです。
そこで私が事業を引き継ぐ決断をしました。その後、法人化を行い、現在の会社として事業を続けています。
一人ひとりが主役になれる会社を目指して
――現在の組織体制について教えてください。
現在は従業員(アルバイト含む)が10名在籍しています。また同業の協力会社とも連携しながら業務を行っています。
――社員とのコミュニケーションで大切にしていることは何でしょうか。
私が大切にしているのは、従業員一人ひとりに働きがいを感じてもらうことです。
私自身、10代の頃から現場に出て働いてきましたし、今でも現場に出ることがあります。そのため、現場の作業員がどこまでできるのか、どんな仕事をしているのかを理解しているつもりです。
その上で、従業員それぞれに責任を持って仕事を任せたいと考えています。全員が主役になれるような会社にしたい。そうした思いで組織づくりを進めています。
和歌山で存在感のある企業へ
――今後の展望について教えてください。
これからの展望としては、M&Aを通じて和歌山県内で絶対的な存在になっていきたいと考えています。
石油業界は全国的に見ても事業者が減っている業界です。しかし一方で、燃料そのものは社会にとってなくてはならない存在です。
ただ、業界全体としては利益率が高くないという現状があります。競合が多く、価格競争になりやすいことが背景にあります。特に和歌山県ではその傾向が強いと感じています。
そこで、M&Aによって事業者同士がまとまり、グループとして規模を持つことで、薄利の構造を改善していけるのではないかと考えています。事業者を取り込みながら、地域全体で持続できる仕組みをつくり、ウィンウィンになれる形を目指しています。
――現在直面している経営課題について教えてください。
現状では、ある程度のマーケットは確保できていますが、経済の悪化に伴い全体の需要が減少しています。既存の営業活動はこれまで通り継続していきますが、それだけでは売上の成長は難しいと感じています。
そのため、M&Aによる他地域への展開を進めていかなければ、将来的な経営の維持も難しくなる可能性があります。そうした危機感を持ちながら、事業の拡大を考えています。
3年後の目標としては、現在の売上の1.5倍を目指しています。
災害時のインフラを支える役割
――事業を通じて社会にどのような価値を提供したいと考えていますか。
石油の配送事業は、災害時にも重要な役割を担います。特に和歌山県では南海トラフ地震などの大規模災害が想定されており、災害時には重機を動かすための燃料供給が復旧活動に直結します。重機が動かなければ復興も進まないため、タンクローリーによる燃料供給を担う私たちの役割は非常に大きいと感じています。実際に和歌山県でもタンクローリーの保有台数を把握しようとするなど、燃料供給体制への期待は高まっています。そうした背景からも、地域全体を支えられる存在になりたいという思いを強く持っています。
また、当社では石油事業とは別にドローンの設備も導入しています。上富田町と災害協定を結び、災害発生時には捜索活動などに活用できる体制を整えています。これはビジネスとしてではなく、地域貢献の一環として取り組んでいます。
地域に根ざした雇用のあり方
――採用について課題や考え方を教えてください。
採用面では現状、特に大きな課題は感じていません。私が意識しているのは、地域で長く働いてきた高齢の方々にも働く機会を提供することです。
老後2000万円問題が話題になったように、地方では年金だけでは生活が難しい方も少なくありません。実際、この地域でもご高齢の方が働き続けている姿を多く見かけます。当社の仕事は、運転の適性と必要な資格があれば高齢の方でも働けるのが特徴です。
若手を育てて次世代につないでいくという考え方ももちろん大切ですが、地域を長年支えてきた方々に働く場を提供することも重要だと考えています。そうした方々の生活の一助となりながら、地域に貢献できる雇用をつくっていきたいと思っています。
磯釣りでリフレッシュする休日
――休日のリフレッシュ方法を教えてください。
趣味は磯釣りです。当社のある上富田町からは、15分も走れば海に出られます。串本など和歌山県全域を釣り場として楽しんでいます。磯釣りが一番のリフレッシュになっています。
経営は自分自身を成長させてくれる
――最後に、経営者やこれから起業する方へメッセージをお願いします。
経営とは、自分自身を成長させてもらえるとても良い機会だと思っています。良いときもあれば苦しいときもありますが、その経験を通して多くのことを学べます。
私自身、起業して一番大変だったのは資金繰りでした。燃料を仕入れる際は先払いで、販売は掛けになることが多いため、資金の流れを管理するのが非常に難しいのです。
仕事は取れても、お金がついてこないという壁に何度もぶつかりました。金融機関に相談しても、実績のない段階ではなかなか相手にしてもらえません。だからこそ、金融機関との関係づくりは非常に大切だと実感しています。思いつきで起業した部分もあり、事前の準備の重要性も痛感しました。
そして、どんな事業であっても最終的には人と人との関係です。人を大切にできる人が、結果的に伸びていくのではないかと思います。そうした姿勢を忘れずに経営に向き合っていくことが大切だと感じています。