海を守る新素材開発と若き世代へつなぐ創造のバトン
アイーコンポロジー株式会社 代表取締役 三宅 仁氏
アイーコンポロジー株式会社は、バイオマスを活用した材料開発を通じて、プラスチックが抱える環境課題に向き合っている会社です。長年ものづくりの現場に携わってきた経験をもとに「今ある便利さの先にある問題」を見つめ、新たな材料を生み出してきました。本記事では、代表の三宅仁氏に事業の背景から経営に対する考え方、若い世代への思いまで、伺いました。
海を守る新素材の挑戦
――現在の事業内容や取り組んでいることについて教えてください。
私たちは、バイオマスを活用した新しい材料の開発に取り組んでいます。
プラスチックという材料があります。若い人にとっては生まれたときから当たり前にあるもので、今はいろいろな種類がありますが、ほとんど全て石油からできています。何でもかんでもプラスチックで作った結果、今やその量はなんと4億トン以上です。そして廃棄されたプラスチックがあふれ、海がプラスチックまみれになっています。これはとても問題だと気づいたのがヨーロッパの国々です。一方で日本はそんなこと関係なしに作り続け、私たちもそれをずっとやってきていました。このままいくと、日本のみならず、世界の海が大変なことになる。これから先、魚の量よりも廃プラスチックの量が多くなるとも言われています。日本人は気づいているかどうか分かりませんが。
私は植物バイオマスを使用して、従来のプラスチックと同じように使えるものができれば、それは環境の負荷を減らし、世の中の手助けになるのではないかと考えました。
――そうした開発で大事にしていることは何でしょうか。
私たちは、まず「作ること」を大事にしています。売ることももちろん大切ですが、開発者が自分で売るのははっきり言って難しい。ですから、まずは技術として成立させること、形にすることを優先してきました。
また、私が強く思っているのは、これを自分の世代で終わらせてはいけないということです。私はもう70を過ぎていますので、若い人たちに技術や考え方を残していきたい。これから先、若い人たちのアイデア次第で、産業や日常生活、さまざまな分野に活用の可能性が広がると思っています。今までゴミになっていたものが、環境に配慮したかたちで使えるようになる。そういう未来につながればいいと考えています。
定年から挑んだ素材革命
――経営者になられた経緯を教えてください。
私はもともと石油会社にいて、研究開発から事業開発まで携わってきました。会社にいた頃から、植物バイオマスを使った材料のことを考えていました。ただ、当時の会社にとっては、必ずしも利益になる取り組みではなく、本気で取り組む分野ではなかった。しかし非常に良い材料ではありました。当時ちょうど定年となる六十歳のときに、会社に残るのではなく、自分でやる道を選びました。辞めた次の日から会社を作り、自分で開発して普及させないといけないと思ったのです。遅れて仲間も会社に入ってきました。
現在は、植物バイオマスを複合化したプラスチックで、色々な容器や水筒をはじめ、海で生分解して環境を汚さないポリ袋や海面に浮かぶフロートのような良いものが出来てきています。このようなものはこれまで世の中にありませんでした。地上ではうまく集めて処理すればよいものも、海に出ていったものはどうしようもありません。このフロートは学術調査でも使用してもらっています。
――ご自身が大事にしている考え方や価値観を教えてください。
「ゴーイング・コンサーン」(企業が将来にわたって事業を継続するという前提)ですね。会社を作ること自体はそんなに難しくないかもしれませんが、会社は継続してこそです。
もう一つは、考えることの大切さです。話を聞いて「腹に落ちる」という瞬間がある。そこからまた自分の中で、頭で考えて、次のアイディアや考えが浮かぶ。そしてまた「腹に落ちる」、いわゆるアハ体験ですね。その積み重ねが次の発想につながっていく。その体験をすると非常にスッキリするわけです。もの作りをする時、初めてだからどうやればできるのか考える、こうすれば良いのか?とやってみたらできた!その喜びがまた次の創造につながる。人間社会はそうした積み重ねで進んできたのだと思います。
――現在課題となっていることを教えてください。
日本ではあまり売れません。ヨーロッパでは注目されますが、日本では全く注目されない。やはり価格も課題とは思いますが、数百kgほどしか作っていないため、コストダウンすることが難しい状況です。それでは会社の経営も難しくなります。製造量の問題が大きい。
そこで、もう割り切って、私たちがこの世にいなくなった後に使ってもらえるような材料を作ろうじゃないかと。世界をリードするというような立場ではありませんが、そんな材料を作ろう、そう考えたわけです。東京都の公設機関と一緒に「ビオフェイド」という海水中でも容易に生分解するプラスチック特許材料を開発しました。作ったものをこれからどう世の中に使ってもらえるかが問題です。
次代へ託す技術の志
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
開発者が作ったものを持ったままにせず、これはこれとしてセールスのプロに任せて売ってもらう。得意とする人たちが、それをネタにお金儲けをしてもらえればいいと思います。開発した商品を、新たな発想によって世の中をよくするために使ってもらいたい、それが私の望みです。聞こえはいいと思いますが、まさにそうやって、代々若い人に伝え、また次の世代へ経験を積みながら次の人に繋いでいければ、まだまだ日本も捨てたもんじゃないと思います。
プラスチックによって便利な世の中になりましたが、それは私たちのもっと先輩方が「プラスチックはとても良いものだ」と、色々と作りすぎてしまったので、反対にプラスチックが人間を苦しめる存在になってしまった。では、何が問題なのかを、私達が次の世代の人間として解決していく。さらに次の世代がそれを生かし、課題が出たらアイディアを駆使して、解決していくということがこの国に必要なのです。つまりイノベーションです。
――これからの若い人たちへのメッセージをお願いします。
若い人たちも色々なことをやり始めても、そのままズルズルといってはダメなのです。世界中の人たちがこうやったらもっといい世界になる、という積み重ねでここまで来てるわけです。若い人たちは自分のためでもいいんです。より良いもの・ことを作っていくという精神なんです。未来の創造はAIではまずできない、これが人間たる所以ではないかな、つくづくそう私は考えます。