野球への愛と人の縁を力に――株式会社IforCが目指すプロ野球選手のセカンドキャリア支援のかたち
株式会社IforC 代表取締役 高松 隆太氏
株式会社IforCは、元プロ野球選手のセカンドキャリア支援を軸に、イベント企画、野球ファンコミュニティの運営、企業のPR支援に加え、現役選手やOB向けのメンバーシップ(ファンコミュニティ)プラットフォームの提供・運営支援を行っています。現在は野球領域に特化しながら、選手、ファン、企業をつなぐ場づくりを進めています。その根底にあるのは、代表の高松氏自身の「野球が好き」という強い思いと、「ワクワクをつなげたい」という一貫した価値観です。本記事では、事業を始めた背景や会社の強み、組織づくりの考え方、そして今後の展望について伺いました。
野球への思いから始まった起業と事業の軸
――現在の事業内容について教えてください。
元プロ野球選手のセカンドキャリアを応援するためのイベント企画や、野球ファンコミュニティの運営、企業のPR支援を行っています。会社としての大きな軸は、やはりセカンドキャリア支援です。
ホームページ上ではアスリートという広い表現を使うこともありますが、現時点では野球選手に特化しています。今はまだ野球選手の領域でしか取り組めていませんが、将来的にはサッカーやバスケットボール、バレーボールなど、さまざまなスポーツにも広げていきたいと考えています。
――この事業を立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか。
もともとはゴルフ業界で5年ほど働いていました。その中で、平日の昼間にゴルフの練習をしたり、クラブを買いに来たりする経営者の方々に出会う機会が多くありました。会話をする中で、人としての懐の深さやかっこよさを感じ、「若いうちに経営者になるのもいいな」と漠然と思うようになったんです。
一方で、仕事には恵まれていたものの、自分の中にモヤモヤした気持ちやワクワクしない感覚がありました。そこで一度、自分と向き合う時間をつくろうと決め、自己分析を始めました。その結果、やはり自分は野球がものすごく好きで、野球には強い愛情があると気づいたんです。
さらに2015年ごろ、世の中の情報を広く調べていく中で、有識者や経営者の方々が「これからはエンターテインメントの時代になる」「リアルな体験やイベントの価値はより高まっていく」と語っているのを多く目にしました。
人生100年時代と言われる中で、人は余暇の時間が増え、その時間をエンターテインメントや体験に使う流れが加速していく。さらにテクノロジーの進化によって、人がやるべき仕事自体も変わり、「何をするか」よりも「どう時間を使うか」が問われる時代になっていく。——そうした時代の空気感を強く感じたんです。
その考えに、自分の「野球が好き」という想いが重なり、「これなら自分の人生をかけて挑戦できる」と思えました。
そこから起業への興味が重なり、2015年11月に個人事業としてイベントで独立しました。その後、2018年に法人化しています。
――高松代表ご自身も野球に関わってこられたのでしょうか。
見るのももちろん大好きですし、自分でも高校時代まで野球をしていました。大学でも草野球や野球サークルに関わっていました。プレーすることだけではなく、支える側にも関心があって、たとえば野球中継を見ていてもカメラアングルや演出が気になるタイプでした。見るのもするのも好きですし、支えるのも好き。それが今の事業につながっています。
選手とファンの近さが生む、IforCならではの強み
――御社の強みはどこにあるとお考えですか。
自分自身が人とのつながりをベースに生きてきたこともあり、プロ野球OBの方々とは比較的濃くつながれていると思っています。また、会員制の野球ファンコミュニティも運営しているので、会員の方々とダイレクトに交流する機会があります。
その中で、企画に対するアイデアや意見、時には厳しい声も直接いただける関係性ができています。OBの方々やファンの方々との距離が近く、熱量も高い。そうした声をすぐ企画に反映しやすいことは、一般的なイベント企画・制作会社とは違う強みだと思っています。
「ワクワクをつなげる」という理念と組織づくり
――会社の理念やビジョンについて教えてください。
会社として大切にしているのは、「ワクワクをつなげる」という考え方です。何かをきっかけに人と人のご縁がつながり、そこからワクワクが生まれて、人生が少しでも前向きになる。そんなきっかけの一つでありたいと思っています。
イベントに来て元気になった、つらいことがあったけれど前向きになれた、あるいはOBの方がイベントへの参加を通じて新しい挑戦をする勇気を持てた。そうした小さな変化でも、自分にとっては大きな意味があります。
ワクワクしたら人は強くなれると本気で思っていて、それは自分の人生においてもキーワードです。今は「ワクワクをつなげる」ですが、これからは「つなぎ、そして広げる」ところまで進めていきたいと考えています。
――人と関わる上で大切にしていることは何でしょうか。
現在は一人で事業を運営しながら、業務委託メンバーとチームを組んでいます。全体では10名前後のメンバーと日々コミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めています。
そうした中で大切にしているのは、こまめな報連相です。物事が進む中では不安や迷いが生まれやすく、コミュニケーションが不足するとチーム全体の推進力も落ちてしまいます。だからこそ、細かく共有すること、早めに相談することを意識しています。
一方で、プロジェクト管理や進行の精度についてはまだ課題も感じており、よりチームとして力を発揮できる体制づくりに向き合っているところです。
自分自身、弱みを開示することは課題だと感じていますが、その分「何でも言ってほしい」という関係性をつくることはより意識しています。
――今後、一緒に働きたいのはどんな方ですか。
やはりワクワクしている人ですね。楽しそうに仕事に向き合っていて、「こういう企画をやりましょう」「今後こうしていきましょう」と、自分の意見やアイデアをしっかり出してくれる人と働きたいです。
たとえ途中でうまくいかないことがあっても、そこで止まるのではなく、「では次はこうやってみよう」ともう一度前を向いて動ける人に魅力を感じます。前向きさやバイタリティのある人と、一緒に新しいことをつくっていきたいですね。
全国への展開と、プロ野球選手のセカンドキャリア支援への思い
――今後の挑戦や展望についてお聞かせください。
イベントという面では、すでにプロ野球OBの方々やファンの方々と一緒に企画をつくる取り組みは始まっています。今後はそこに企業や地域も巻き込みながら、さらに広げていきたいです。
現在は東京や関東での開催が多いのですが、今後はプロ野球球団のある地域へ展開していきたいと考えています。愛知、大阪、仙台、北海道、広島、福岡など、まずはそうした地域で開催できるようにしたいです。まだ関東にとどまっている段階だからこそ、全国に広げていく余地があると思っています。
――今感じている課題はありますか。
企業との取り組みをもっと広げていきたいというのが一つの課題です。昨年は40本を超える主催イベントを実施しましたが、イベントを企業にとってのPRの場としてもっと活用してもらいたいですし、プロ野球選手と企業との接点もさらに増やしていきたいと考えています。
年間イベントスポンサーも募っており、すでにいくつかの企業様とご一緒させていただいていますが、今後はさらにご縁を広げていきたいと考えています。
企業との接点自体は少しずつ増えてきているものの、それを継続的な取り組みや価値として形にし、より広げていくフェーズにあると感じています。
プロ野球選手と企業、そしてファンをつなぐ取り組みを、より多くの方と共創していけるよう、営業支援の活用も含めて動き始めているところです
――最後に、読者へ伝えたいことをお聞かせください。
アスリートのセカンドキャリアという言葉は広く知られていますが、その難しさは競技によって大きく異なると思っています。特に野球は年間の試合数も多く、キャンプやシーズン、ポストシーズン、その後の活動まで含めると、ほぼ1年を通して野球と向き合う時間が圧倒的に長い競技です。家族との時間も含め、自由に使える時間が限られやすいという事情があります。
さらに、生活水準やお金の使い方、引退後に減っていく仕事のことなど、表からは見えにくい難しさもあります。レジェンド級の選手を除けば、引退後の再出発は決して簡単ではありません。
だからこそ、そうした現実を理解したうえで、「これが本当のセカンドキャリア支援だよね」と企業の方々と一緒に形にしていけたらうれしいです。