AIでサイエンスを加速させる――IDATENaseが描く研究開発の未来
株式会社IDATENase 代表取締役 CEO 福田 峻介氏
株式会社IDATENaseは、AI技術を活用し、ライフサイエンスや化学、素材分野などの高度な研究開発を支援する企業です。2024年の設立以来、AI受託開発を通じて、専門性の高いサイエンス領域にアプローチしながら事業を拡大してきました。研究開発の現場に寄り添い、AIによって新たな知見やイノベーションを生み出すことを目指しています。本記事では、代表取締役 CEOの福田峻介氏に、事業の特徴や創業の背景、現在の課題、今後の展望について伺いました。
AIでサイエンスの力を引き出す
――まず、御社の事業内容について教えてください。
当社はAI受託開発を行っている会社です。社名の「IDATENase」は、俊敏さを意味する「韋駄天」と、酵素の名称に使われる「ase」を組み合わせたものです。韋駄天のような俊敏さと、酵素のような柔軟さを持ってAI開発を行いたいという思いを込めています。
――どのような領域に強みを持っているのでしょうか。
特に力を入れているのは、ライフサイエンスや化学、素材、流体力学といった、サイエンスの知識が必要な領域です。一般的なAI開発だけではなく、自然科学の知見を踏まえた上で、お客様の研究開発や製品開発に必要なAIを設計・実装しています。
――具体的にはどのようなお客様から依頼があるのでしょうか。
製薬や創薬、検査機器メーカー、化学メーカー、素材メーカーなどからご相談をいただいています。例えば、顕微鏡画像から細胞の異常判定を行うAIや、バイオ分野における最適化に関する開発など、専門性の高いテーマに取り組んでいます。
起業は“今できる最適解”だった
――起業のきっかけを教えてください。
私は現在も博士課程に在籍していて、もともとは分子生物学の研究をしていました。その中で、いつか薬を社会実装したい、創薬に関わる事業をやりたいという思いがありました。
――最初から現在の事業を考えていたわけではないのですか。
当初は創薬スタートアップの立ち上げも考えていました。ただ、海外の事例を調べる中で、学生の段階ですぐに挑戦するよりも、まずはビジネスの経験や実績を積むべきだと感じたんです。将来的に創薬にも関わりたいという思いは持ちつつ、今の自分が最も勝負しやすい領域としてAIに着目しました。
――AIを選んだ理由は何でしょうか。
1つは、AIが今後ますます重要になると感じていたことです。もう1つは、若い世代でも戦いやすい領域だと思ったことですね。さらに、AIを軸にしながらサイエンス領域のお客様に向き合うことで、将来的に自分が目指す創薬や研究開発の世界にもつながっていくと考えました。
少数精鋭で進める組織づくり
――現在の組織体制について教えてください。
創業時は3人でスタートしましたが、現在役員は私1人です。ほかの創業メンバーも業務委託という形で引き続き関わってくれています。
――メンバーはどのような方が多いのでしょうか。
現在は23名ほどが参画しています。大半は学生で、AIエンジニアとして関わってくれています。中には医師や、別で事業をしながら参画してくれている方もいますが、中心はやはり学生ですね。
――組織運営で感じている課題はありますか。
やはりリソース面です。案件が増える中で、私自身が全ての案件に深く入るのは難しくなってきています。そのため、マネジメントができるAIエンジニアや、営業面を任せられる人材の必要性を強く感じています。
サイエンスを加速させる存在へ
――今後の展望について教えてください。
根底にあるのは、AIによってサイエンスを加速させたいという思いです。私はサイエンスそのものが好きで、もっと多くの発見や知見が生まれる世界を見たいと思っています。そのために、AIを研究開発の現場に活用し、企業や大学、研究機関で新しいイノベーションが生まれる後押しをしたいと考えています。
――社会にどのような影響を生み出していきたいですか。
研究現場では、まだ技術的に限界のある領域も多くあります。そこにAIや情報技術を掛け合わせることで、一段上の研究開発ができるようになるはずです。私たちは、その流れをつくる側に回りたいと思っています。単なる受託開発会社ではなく、サイエンスを前進させる存在になりたいです。
挑戦を続けるという選択
――事業を続ける中で、大切にしている考え方を教えてください。
私自身、まだ創業から1年半ほどで、経営者としてはこれからの立場だと思っています。ただ、実際に事業を始めてみて強く感じているのは、挑戦してみなければ見えない景色があるということです。
もちろん、すべての人が起業するべきだとは思っていません。人それぞれ大切にしたい価値観や幸せの形があり、起業だけが正解ではないと思っています。
ただ、自分の中に「やってみたい」という気持ちがあり、そのために時間やエネルギーをかける価値があると感じるのであれば、一歩踏み出してみることには大きな意味があると感じています。日常の中で少しの時間を積み重ねるだけでも、新しい可能性が見えてくることがあります。
私自身もまだ道半ばではありますが、これからも挑戦を続けながら、自分が目指すビジョンに向かって事業を成長させていきたいと考えています。