食の価値を未来へ届ける──“食育をビジネスにする”挑戦の軌跡
株式会社VACAVO 代表取締役 長岡康生氏
食を通じて人と社会をつなぐ新しい価値創出に取り組む株式会社VACAVO。食育を「サービス」として展開し、企業や社会に新たな形で提供するビジネスモデルを構築しています。本記事では、事業の特徴や創業の背景、組織づくり、そして今後の展望について、代表の長岡康生氏に伺いました。
目次
食育をサービス化し、新たな価値として届ける事業
――現在の事業内容について教えてください。
弊社は「食育」というものを広める活動をしています。一般的に食育は企業のCSR活動の一環として取り入れられることが多いと思うのですが、私たちはそれをサービスとして企画し、販売している点が特徴です。
事業のベースには、食の資格者のプラットフォームがあります。現在、約500名の方に登録いただいており、そのスキルを活用して食育サービスを構築しています。企業からのニーズに応じて、セミナーや企画として提供するのが主なビジネスモデルです。
代表的なサービスとしては、健康経営に取り組む企業向けの食育セミナーがあります。野菜の知識をクイズ形式で学べるセミナーを実施し、その後に実際の野菜を職場や自宅に届ける仕組みです。講師は登録している食の資格者の方々に依頼しています。
さらに、全国の契約農家と連携し、こだわりの野菜を提供している点も特徴です。食の背景にあるストーリーまで含めて届けることで、単なる商品ではなく体験として価値を提供しています。こうした取り組みを通じて、食べることの意味や背景に自然と触れてもらえる機会を増やしていきたいと考えていますし、日常の中に少しでも食への関心が戻っていくきっかけになれば嬉しいですね。
広告業界からの転身と事業のピボット
――創業のきっかけについて教えてください。
もともとは広告会社に勤めていて、独立を考えたときに「広告×農業」という掛け合わせが面白いのではないかと思ったのが出発点です。
当時、農業の六次産業化が広がり始めたタイミングでした。生産だけでなく加工や販売まで行う流れの中で、広告の需要も出てくると考えたんです。ただ実際に取り組んでみると、農家さんは広告に大きな予算をかけられる状況ではありませんでした。
そこで方向転換をしました。現場に足を運ぶ中で、畑や野菜そのものに価値があると感じたんです。それならば、それ自体を企業や商業施設に届けていこうと考え、今のビジネスに繋がっていきました。最初に思い描いていた形とは違いましたが、実際に現場を見て気づいたことをもとに方向を変えたことで、今の軸ができたと感じています。
――ビジョンについても教えてください。
「食育が当たり前にある世界をつくる」というのがビジョンです。今は食育の機会がかなり減っていると感じています。昔は家庭の中で自然と学べていたものが、環境の変化によって失われている。
便利な社会になった分、食の背景や意味を知る機会が減っていると思います。だからこそ、別の形で食育の機会を増やしていくことが必要だと考えています。ただ単に知識として伝えるのではなく、体験として残るような形で届けていくことが大切だと感じていますし、その積み重ねが少しずつ意識の変化につながっていくのではないかと思っています。
フラットな組織と“正しさ”を軸にした経営
――経営判断の軸について教えてください。
特別に強く意識しているわけではないのですが、「ちゃんと日なたを通っているか」という点は大事にしています。自分の行動が堂々と説明できるかどうか、道義的に正しいかどうかは常に判断基準にしています。迷う場面ももちろんありますが、そのときほどシンプルに立ち返るようにしていますし、結果として自分が納得できる選択をしているかどうかは大切にしています。
――組織づくりで大切にしていることは何ですか。
うちはあまり社長らしく振る舞っていないと思います。役職を意識しすぎると壁ができてしまうので、できるだけフラットな関係を保つようにしています。社長というのもあくまで役割の一つに過ぎないと捉えています。
日常的なコミュニケーションも自然体ですし、上下関係に縛られない環境が結果的に働きやすさにつながっているのではないかと思います。意見も出しやすい雰囲気になりますし、その方が組織としても健全に回っていく感覚があります。
――どのような人と働きたいですか。
シンプルですが、嘘をつかない人ですね。裏表がないことが一番大事だと思っています。信頼関係があってこそ組織は機能するものなので、そこは重要なポイントです。スキルももちろん大切ですが、それ以上に人として信頼できるかどうかは重視していますし、長く一緒に働くうえでも欠かせない部分だと感じています。
食育カンパニーとしての成長と今後の展望
――今後の展望について教えてください。
現在取り組んでいる「食育マルシェ」というサービスを横展開していきたいと考えています。一度コロナの影響で中断した時期もありましたが、その間にオンライン対応も進みました。
コロナ明け以降は大手企業からの問い合わせも増えてきており、改めて需要の高さを実感しています。これを機に、より広い領域へ展開していきたいと思っています。単発の取り組みではなく、継続的に関われる仕組みとして広げていけると、より価値が伝わるのではないかと考えていますし、企業との関わり方もさらに深めていきたいところです。
会社としては「食育カンパニー」を掲げていますが、名実ともにその存在になることが目標です。その言葉だけが先行するのではなく、実態としてもそう認識されるような状態を目指していきたいですね。
――今後の課題についてはどう考えていますか。
やはり採用が一つの課題になると感じています。特に営業人材の強化は必要です。ただ、食育という領域は一般的な商材とは違い、形のあるものを売るわけではありません。
そのため、食に興味がある方でないと難しい側面があります。価値を伝える力が求められる分、適性のある人材をしっかり採用していきたいと考えています。加えて、単に人を増やすだけではなく、この事業の意味を理解してもらうことも重要だと感じていますし、その共感があってこそ継続的に力を発揮してもらえるのではないかと思っています。
経営者としての視点とリフレッシュの時間
――影響を受けた人物はいますか。
経営者全般に興味はありますが、実際にお会いしたことはないですが、なかでも楽天の三木谷さんは印象に残っています。厳しい状況に直面しても立ち止まらず、挑戦し続けている姿はやはりすごいですよね。
環境が変わっても前に進み続けるあのスタンスには、経営者としての覚悟を感じますし、自分自身の判断にも通じるものがあると感じています。
――リフレッシュ方法について教えてください。
山を走ったり、ジムに行ったりと、体を動かすことが多いですね。単純にリフレッシュになるというのもありますが、頭の中が整理される感覚もあって、結果的に仕事にもいい影響が出ていると感じています。
日常の中で意識的にそういう時間を持つことで、気持ちの切り替えもしやすくなりますし、自分のリズムも整いやすくなります。
これからも無理なく続けられる形でコンディションを整えながら、挑戦を重ねていきたいと思っています。