次の100年へ、受け継いだ技と想いをつなぐ――老舗うなぎ屋の挑戦
(有)栄松フードシステムズ
松田うなぎ屋 代表 松田 譲一氏(インタビュアー:松田 拡樹氏)
有限会社栄松フードシステムズ 松田うなぎ屋は、大正8年創業のうなぎ屋を運営する企業です。創業から100年以上にわたり、うなぎと手打ちそばを提供し続けてきました。老舗として受け継いできた味と技を守りながらイベント出店やふるさと納税にも取り組んでおり、今後はEC展開も視野に入れているといいます。本記事では、代表の松田譲一氏に、これまでの歩みや事業へのこだわり、次の100年に向けた想いなどについて詳しく伺いました。
老舗として守り続ける、うなぎと手打ちそばの味
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当店は、大正8年創業のうなぎ屋です。今年で創業107年で、長く続いてきた老舗であることは、当社の大きな強みだと考えています。
うなぎの焼き方にも、こだわりがあります。関東では一度蒸してから焼く方法もありますが、当店では、蒸さずに焼く「地焼き」で仕上げています。ふわふわというより、パリッとした食感を楽しんでいただけるのが特徴です。さらに、炭にもこだわり、すべて地元産の炭で全行程仕上げています。
うなぎと並んでもう一つ、創業当初から続けているのが手打ちそばです。製麺機などは使わず、今も手打ちにこだわっています。
――現在の販売方法についてもお聞かせください。
現在、売上の9割ほどを占めているのは、店舗での販売です。そのほか、イベント出店やふるさと納税、電話注文での販売などが1割ほどあります。
ただし今後は、店舗を8割程度に抑え、残りの2割を、イベントやECサイト、ふるさと納税などで徐々に伸ばしていきたいと考えています。オンライン販売については、今は電話で注文を受けていますが、今後はホームページを整えたうえで、ECにも対応していく予定です。
店舗で召し上がっていただく様な焼き上げを、遠方の方にも同様の味を届けられる仕組みを整えていきたいと思っています。
経営に重要なのは、バランス感覚を持って取り組むこと
――代表になられた経緯を教えてください。
もともとはヨットでオリンピックを目指したいという夢もあり、うなぎ屋を継ぐことはあまり考えていなかったんです。高校・大学と地元を離れ、当時の西武流通グループの「レストラン西武」に入社し、レストランのノウハウや経営、マネジメント、現場運営を学びました。
しかし、25歳ころ、父の病気をきっかけに店の経営を続けることが難しくなったことをきっかけに、実家に戻ることになりました。そこから現在まで、3代目として現在も店に立ち続けています。
――経営における判断の軸は何でしょうか。
「シンプル・イズ・ベスト」です。物事を考えすぎず、かといって考えなさすぎず、バランス感覚を持って俯瞰的に見定めることを心がけています。
また、難しい言葉はわかりやすく、難しい仕組みは視覚的にわかりやすくする――そして、淡々とやり切っていくことが大切だと考えています。
長く商売を続けていると、守るべきものと変えるべきものの両方があります。大切なのは、難しく考えすぎず、本質を見失わないことです。先代から受け継いできた思いや技術は、絶対に譲れません。これまで続けてこられたのは、その歴史と技術があったからです。次の世代へつなげるためにも、そこは守り続けていきたいです。
人は宝――仲間が幸せを感じられる職場へ
――組織運営で大切にしていることを教えてください。
職場で働く人たちが幸福感を持てる環境をつくることを大切にしています。
人は宝です。人材という言葉も、「人財」と考えています。日頃から会話を重ね、やりがいのある職場づくりを意識しています。
社員というよりも、スタッフ、仲間という感覚です。一緒に働いている仲間だからこそ、少し元気がないときにも気づけるようにしたいんです。何でも相談できる職場が理想ですが、現実には難しい部分もあります。それでも、そこに近づける努力は続けていきたいです。
人が辞めるときに、本人だけの問題として考えるのではなく、自分たちの環境に何か原因がなかったかを考えることも大切です。働き続けたいと思える環境、やる気を持てる環境をどうつくるかそこに向き合わなければ、会社は大きくならないと思っています。
――一緒に働きたいと思うのは、どのような人ですか。
まず重要なのは、愛嬌があることです。接客業ですので、人と向き合う姿勢は大切です。加えて、野心や真面目さも大事だと思っています。
将来的に独立したい、自分でも何かをやってみたいという想いを持つ方で、当社の事業に賛同してくれる方であれば、会社のパートナーとして一緒にやっていける可能性があります。今後は、暖簾分けのような形も実現できればと考えています。
ただ人を採用するだけではなく、その人が持っている資質をどう伸ばしていくかも大切です。又、どのように成長してもらうかを考えるのは、迎える側の役割でもあります。そして私どもも、仲間と一緒に成長できる店でありたいです。
次の100年へ――変化を恐れず挑戦する
――今後、挑戦していきたいことを教えてください。
大きな目標は、次の100年もこの松田うなぎ屋を残していくことです。
先代から受け継いできた想いや技術は、絶対に譲れないものです。長く続いてきた店には、積み重ねてきた技と信用があります。その歴史をただ守るだけではなく、次の世代に残していくことが私たちの役割です。大正8年から続いてきた商売のノウハウを活かしながら、勝てる場所、勝てる内容、勝てる商品を見極めて、事業を展開していきたいと考えています。
また、「医食同源」という考え方も大切にしていきたいです。うなぎは元気が出る食べ物という印象があります。事実、栄養価も高く、健康を支える食材でもあります。ただたくさん食べてもらうということではなく、日常の食事のなかで健康を高めるものとして提供していきたいです。それが少しでも社会貢献につながり、結果として会社の発展にもつながると考えています。
ただ、うなぎは高級品というイメージがあり、若い方にとってはなかなか手が届きにくいものでもあるでしょう。だからこそ、イベントでは特別価格で提供し、少しでも本物の味に触れてもらえる機会をつくっています。
店舗は、お客様に来ていただく「待つ商売」です。ただ、それだけではなく、自分たちから動くことも大切だと思っています。イベントに参加することで新しい発見もありますし、売上にもつながる可能性もあるため、今後も守るべきものは守りながら、攻める姿勢も持ち続けたいです。
私どもは、うなぎという軸があるからこそ、さまざまな挑戦ができます。長く続いてきた土台を大切にしながら、時代に合わせて動いていくその積み重ねが、次の世代につなぐ力になると考えています。