測れない力を引き出し伸ばす、こどもたちのもう一つの”まなびそだち”の場

株式会社旦(あけがた) 代表取締役 澤田 浩二 氏

学校や習い事とは異なる、こどもたちの自分らしい”まなびそだち”を叶えるオンラインのバーチャル空間『ねこだま』を運営する株式会社旦。8歳から15歳の小中学生を対象に、好きなこと、やりたいこと、得意なことを起点にしながら、こども同士や大人とのつながりを生み出していく場として展開されています。25年勤めた会社を離れ、この事業に踏み出した澤田氏に、『ねこだま』に込めた想い、事業を進めるうえで大切にしていること、今後の展望について伺いました。

測れる力ではなく、”測り知れない力”を伸ばしたい

――現在取り組まれている『ねこだま』は、どのような場なのでしょうか。

学校教育や、何かを習得するための習い事とはまったく違う場を作っています。義務教育は長い年月続いてきましたが、社会は大きく変わっています。コロナ禍を経て一人一台の端末が行き渡るなど環境の変化はありましたが、学校で行われていること自体は、自分がこどもの頃と良くも悪くもあまり変わっていないと感じています。

学校教育を完全否定したいわけではありません。ただ、AIをはじめとするテクノロジーがこれだけ進化し、半年さえどうなっているか分からないような現実社会とは乖離しています。また、そんな時代だからこそ、こどもたちの生まれ持った力を引き出し伸ばせる環境が必要で、別の選択肢があってもいいのではないかと思っています。

学校では、測るものも測り方も決まっている「測れる力」が評価されがちです。でも、一人ひとりの中には、そこに当てはまらない「測り知れない力」があるはずです。

『ねこだま』は、こどもたちが「好き」「やりたい」「得意」を見つけたり、純粋にやりたいことをやっていいのだと感じられたりする場を目指しています。だから、教育という言葉よりも、”まなびそだち”という言い方の方が近いと感じています。

——”ねこ”をモチーフにしている理由を教えてください。

『ねこだま』には、”ねこの目玉”のように目まぐるしく変わる時代に、自分の力でしなやかに渡り歩いていく”ねこだましい(猫魂)”が大事との想いを込めています。

そして、一人ひとりの中に眠っている、本人も周囲の大人もまだ気づいていない力を大切にしたいというコンセプト”眠れる子の魂の瞬き場”も含めて凝縮したネーミングが『ねこだま』で、”ねこ”の自律的で自由な姿に、今のこどもたちに必要なあり方を重ねています。

挑戦する大人の背中を、こどもたちに”魅せる”

――25年勤めた会社を離れ、事業に踏み出されたきっかけを教えてください。

きっかけは一つではありません。前職では、クライアントの課題を解決することを通じて、その先にいる生活者や社会の課題解決につながるという想いで働いていました。それが、組織やビジネスの中で、本当に世の中を良くしているのだろうかという疑問と限界を強く感じるようになりました。

自分のこどもたちの将来を考えた時に、今の社会や学校のあり方に対して、このままで大丈夫か?という危機感が強くなったのです。もちろん、自分一人の力で社会を変えられるとは思っていません。

ただ、誰かが何かをしなければ変わらないのなら、自分にできることをやってみようと考えました。そこに賛同してくれる人や、一緒に加わってくれる仲間と出会えれば、何かが動き始めるかもしれないと思っています。

また、こどもに「失敗してもいい」「挑戦しなさい」と言うなら、親である自分自身が挑戦していなければ説得力がないとも感じていました。言葉で教え込むのではなく、失敗も含めて、自分が行動している姿を”魅せる”ことが、こどもにとって最大の”まなび”になるのではないかと思っています。

——「失敗」に対し、どのように考えていますか。

『ねこだま』でも、成功体験だけを大切にしたいわけではありません。むしろ成功は、失敗の積み重ねの先にあるものだと思っています。最初からうまくいっても、そこにはあまり学びがない。

転んで立ち上がることで歩けるようになるように、失敗には本来たくさんの”まなび”があります。だからこそ、大人が悪戦苦闘しながら、それでも黙々と何かに打ち込む姿を、できるだけ生々しくこどもたちに”魅せたい”と思っています。

志が重なる仲間と、未来の選択肢を広げていく

――事業を運営するうえで大切にしていることを教えてください。

まず、一緒に事業を進めていく人については、選定という感覚ではなく、志が重なるかどうかを大切にしています。どれほど優れた技術やスキルがあっても、向いている方向が違うと、形にしていく中で歪みが生じてしまいます。

何ができるかよりも、面白いと思ってくれるか、一緒にやりたいと思ってくれるか。その感覚を大切にしています。

今の関係性は、桃太郎に近いと思っています。きび団子ひとつで鬼退治へ一緒に行くのは、命がけの挑戦に対してあまりにも釣り合っていない。にもかかわらず、桃太郎の志に共感して、犬、猿、雉が集まってくる。

それぞれ違う強みを持つ個性が集まり、結果として一つの強いチームになる。『ねこだま』も、そういう形で広がっていくと良いなと考えています。

――今後挑戦したいことを教えてください。

今後は、この場を必要としているこどもたちや、不登校などで悩んでいる保護者に少しでも届くようにしていきたいです。小中学生に直接届けることは簡単ではありません。大人を通すと大人のフィルターが入り、こどもに届かないこともあります。

だからこそ、コンテンツパートナーとなる人たちとのつながりを広げ、たとえば不登校のこどもたちを支援しているNPOなど、実際にこどもとつながっている方々との自然な接点を作っていきたいと考えています。

従来の学歴社会や偏差値を軸にした進路の考え方は、今後大きく変わっていくのではないかと感じています。大学や就職を経ずに、早くから自分の力で社会に出て活躍するこどもがたくさん出てくるかもしれません。

学校教育では凹んだ部分を均そうとしますが、むしろ凸なところに目を向けて、そこを思い切り伸ばしていけばいい。そんなふうに、こどもたちに「どんどん行っちゃえ、やっちゃえ」と言ってあげられる大人が一人でもいることで、その子の人生は大きく変わると思います。

事業として譲れないのは、心に描く”ありたい姿”を本気で目指すということです。世の中では、お金になるかどうかが先に立ちすぎていると感じます。子育てにおいても、こどもに対して「それで食べていけるのか」「何の役に立つのか」と大人は先に言ってしまいがちです。

でも、やっていった先に何になるかは、最初から分かるものではありません。『ねこだま』も、ビジネスが先に立ってしまえば、こどものために始めたはずの場がお金ありきになってしまう。だから、本意である”すべてのこどもたちが格差なく”無料で使えることを優先し、お金は後回しにする順番で、本来の目的を大切にしながら取り組んでいます。

呼吸・泳ぎに集中。無になることが最高のデトックス

――リフレッシュの仕方について教えてください。

リフレッシュの方法は水泳です。週に一度ほど泳げる時には泳ぐようにしています。散歩をしている時は考えを巡らせてアイデアが浮かぶなどありますが、泳いでいる時は、呼吸や泳ぐことに集中するので余計なことを考える余地がありません。

水に流すという言葉の通り、泳ぐことで無になり、デトックスできる感覚があります。そうして自身も一新しながら、こどもたちと一緒に『ねこだま』を大きく育てていきたいです。

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